「最近、抜け毛がひどいけれど、原因はなんだろう」
「髪が抜けるのは内臓の病気のせいなのだろうか」
「髪が抜ける内臓の病気について詳しく知りたい」
こういったお悩みを持ってはいませんか。
抜け毛の原因は、生活習慣以外に病気が隠れている可能性があります。もし、病気が原因であれば、早めに医療機関へ相談すれば、適切な治療やケアができるでしょう。
この記事では、抜け毛の原因である内臓の病気や、男女別に多く見られる脱毛症などを解説します。自分でできる改善法もお伝えするので、抜け毛に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
髪が抜けることから考えられる内臓の病気と原因
髪が抜ける原因となる内臓の病気には、主に以下の4つが挙げられます。
病名 | 主な原因・症状・治療 |
膠原病(全身性エリテマトーデス・強皮症など) | 自己免疫異常・炎症症状・内服や注射 |
バセドウ病 | 甲状腺ホルモンの亢進・だるさや筋力低下・内服 |
梅毒 | 性行為感染・皮膚や粘膜症状・ペニシリン内服 |
鉄欠乏性貧血 | 鉄不足・貧血症状・鉄剤内服 |
病気により原因や治療法などが異なるため、以降で詳しく解説します。
膠原病(こうげんびょう)
膠原病(こうげんびょう)は、皮膚や内臓、血管などが炎症を起こすいくつかの病気の総称です。病原体から身を守るための免疫システムに異常をきたし、自分自身の身体に誤って攻撃をおこすため、自己免疫疾患とも呼ばれます。膠原病は、特定疾患(いわゆる難病)に指定され、公費補助対象疾患です。
髪が抜ける主な病気は、全身性エリテマトーデスや全身性強皮症などです。全身性エリテマトーデスの原因は不明ですが、自己免疫疾患の異常と考えられています。また、強皮症は、免疫システム、タンパク質からなる結合組織の繊維化、血管病変の3つの異常が関与しているとも考えられています。髪の抜け方は、髪全体の量が減るケースや部分的な脱毛など個人差がみられます。
治療には、飲み薬のほか点滴や注射、塗り薬が使われます。膠原病の治療が進み、症状が落ちつくと抜け毛が抑えられるでしょう。
バセドウ病
バセドウ病は甲状腺ホルモンの分泌が異常に増え、体全体の代謝が活発になる病気です。代謝機能の亢進(こうしん)から、だるさや筋力低下、脱毛などの症状があらわれます。脱毛量が増えるのは、成長しない毛も抜けるからです。
治療法には、甲状腺ホルモンをコントロールする飲み薬や放射線治療があります。甲状腺ホルモンの過剰な分泌が抑えられることで、脱毛症状を緩和させます。
梅毒
梅毒は、血液や粘膜を介してうつる、梅毒トレポネーマという細菌が原因の性行為感染症です。初期には、感染した粘膜やリンパ節部分に軟骨のような硬さのしこりができ、数か月後には皮膚のできものや脱毛症状があらわれます。
梅毒の治療には、ペニシリン系の抗菌薬が有効です。
脱毛は、かなり進行してからあらわれるため、全身症状が出ない時期の早めの治療が重要です。感染の可能性がある方は、地域によっては匿名・無料で検査が可能なので、問い合わせてしてみてください。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは、体の中で鉄が不足しておこる病気です。鉄不測の原因には、主に以下のようなものが挙げられます。
- 栄養の偏りによる鉄分不足
- 消化性潰瘍やがん、痔やなどの慢性出血による鉄の喪失
- 腸からの鉄吸収障害
症状としては主に、以下のようなものがあります。
- 動機や息切れ
- だるさ
- 頭が重くなる
- 疲れやすくなる
- 顔色が青白くなる
鉄は血液を作る要素のひとつで、髪の毛の生育に欠かせない栄養素です。鉄欠乏性貧血になると頭皮へ酸素や栄養素を運べなくなるため、健康的な髪の毛が育たなくなります。その結果、細い髪の毛となり抜ける数が増えてしまします。
鉄欠乏性貧血の改善には、不足している鉄を補うために、「鉄剤」を使用します。鉄剤は、飲み薬が基本で、数か月の継続が必要です。
髪が抜けることから考えられる内蔵以外の病気と原因
髪が抜けることから考えられる内蔵以外の病気は、主に以下の3つです。
病名 | 主な原因・治療 |
円形脱毛症 | 自己免疫疾患・外用薬や内服 |
薬剤性脱毛症 | 薬剤の副作用・内服の中止 |
抜毛症(トリコチロマニー・トリコチロマニア) | 精神疾患の関与・抗うつ剤 |
円形脱毛症
円形脱毛症は、急に円形や楕円形に毛が抜ける脱毛症です。10円玉の大きさから頭皮全体に広がるもの、全身の体毛まで抜けるものなど、さまざまなタイプがあります。治療法は、年齢や脱毛の範囲などによって変わります。初期の治療法では、塗り薬や飲み薬を用いますが、その他、光線治療をおこなう場合もあります。
ストレスが原因と思われがちですが、最近の研究で自己免疫疾患が原因の円形脱毛症もわかってきました。ほかには、アトピーや遺伝性、女性ホルモンのバランスの崩れが原因といわれています。
薬剤性脱毛症
薬の副作用による脱毛症は、抗がん剤によるものと抗がん剤以外薬剤によるものがあります。
抗がん剤が原因の場合は、毛根にある毛髪のもとになる細胞が死滅して生じる脱毛です。多くの場合、抗がん剤の治療終了後に髪の毛は再生します。
抗がん剤以外が原因の場合は、皮膚の乾燥に多用されるヘパリン類似物質や非ステロイド系の内服薬が関わっている可能性があります。また高血圧や糖尿病、高脂血症の薬の中にも抜け毛の原因のひとつです。
抗がん剤以外の薬による抜け毛は、数か月後に症状が出るケースもあり、原因の特定が難しい場合もあります。薬剤性脱毛症は、原因と考えられる薬をやめることで症状が治まります。
抜毛症(トリコチロマニー・トリコチロマニア)
抜毛症は「トリコチロマニア」ともいわれ、精神的なストレスを回避するために体毛を抜く病気です。精神的なストレスが原因で、髪の毛を抜くことに快感や解放感を覚え、癖になる特徴があります。
抜毛症は人口の約1~2%にみられ、成人患者の約90%は女性です。精神疾患が関与している場合が多く、抗うつ剤や認知行動療法などが治療として用いられます。
男性に多く見られる髪が抜ける病気
男性に多く見られる内蔵疾患以外で髪が抜ける病気は、主に以下の2つです。
病名 | 原因・治療法など |
AGA(男性型脱毛症) | 男性ホルモンの関与・内服や外用薬 |
脂漏性脱毛症 | 脂漏性皮膚炎・内服や外用薬 |
AGA
AGAは男性型脱毛症はといわれ、男性の薄毛の原因の多くを占めている病気です。原因は、男性ホルモンのテストステロンが体内にある5a還元酵素によって、脱毛を促進するジビドロテストステロン(DHT)に変化するからです。
DHTは毛根の毛乳頭に侵入し、男性ホルモン受動体と結合し、髪を作る毛母細胞の働きを阻害します。主な治療法には、以下のようなものがあります。
- 飲み薬:フィナステリド・デュタステリド
- 塗り薬:ミノキシジル
- 植毛や増毛
また、予防や改善には、以下の見直しが大切です。
- 生活習慣
- 食生活
- ストレス
- 頭皮への刺激(紫外線・ケアカラーなど)
脂漏性脱毛症
脂漏性脱毛症は、皮脂の分泌が盛んな頭皮や生え際などに生じる脂漏性皮膚炎で引き起こされる脱毛症です。脱毛が進む以前に、頭皮のかゆみや湿疹、脂っぽいフケが症状としてあらわれます。
治療方法は皮膚科などの医療機関を受診し、抗真菌薬やステロイド外用薬の使用です。また、食事や睡眠、洗髪方法も症状の改善に大きく影響するため、規則正しい生活と正しいヘアケアを心がけましょう。
女性に多く見られる髪が抜ける病気
女性に多く見られる内蔵疾患以外で髪が抜ける病気は、主に以下の5つです。
病名 | 原因・治療法など |
FAGA(女性男性脱毛症) | 加齢や生活習慣など・ビタミン剤や薄毛治療薬 |
びまん性脱毛症 | 加齢やストレス・外用薬やメソセラピー |
分娩後脱毛症 | 出産後のホルモンの変化・自然に治癒 |
卵巣・甲状腺機能の低下 | 専門医へ受診し検査や治療が必要・ |
粃糠(ひこう)性脱毛症 | 大量のフケ・ステロイドや抗ヒスタミン薬、抗真菌薬 |
FAGA
FAGA(女性男性型脱毛症)は抜け毛や髪の分け目が目立ち、頭部全体が薄毛になる症状です。主な原因は、主に以下のようなものが挙げられます。
- 加齢
- 生活習慣、
- 遺伝
- 過激なダイエット
- 誤ったケアケア
FAGAは進行性の脱毛症で自然治癒は困難なことから、AGA専門クリニックで適切な治療を始めることが大切です。治療法はビタミン剤や薄毛治療薬があり、自分の髪で薄毛部分を補充する植毛も有効です。
びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は、頭髪の全体量が減り、髪が細くなることで頭髪全体のボリュームが減ってしまう症状です。
加齢やストレス、女性ホルモンの変化などにより髪に必要な栄養素が行き届かなくなることが原因としてあげられます。
主な治療は、AGA専門クリニックで外用薬や頭皮に薬剤を注入するメソセラピーがあります。また、セルフケアとして生活習慣やヘアケアを見直すとよいでしょう。
分娩後脱毛症
分娩後脱毛症は、出産後の女性ホルモンの急激な変化で発症する脱毛症です。通常は、女性ホルモンの安定で自然に髪が生えてくるため食事や睡眠、頭皮のケアなどに気を付けましょう。
産後の脱毛は一時的な現象で、時間がたてば自然に回復します。気になる場合はAGA専門クリニックで相談することをおすすめです。
卵巣・甲状腺機能の低下
女性の髪が抜ける原因には、卵巣や甲状腺の機能低下があります。卵巣は女性ホルモンの分泌を司り、甲状腺機能は毛母細胞を活性化させる働きがあるからです。
主な原因はストレスや過度のダイエット、睡眠不足など生活習慣によるものです。日常的に不規則な生活を送るとホルモンバランスや自律神経が乱れ、ヘアサイクルが正常に働かなくなると抜け毛を引き起こします。また、更年期障害による急激な女性ホルモンの減少も薄毛の原因のひとつです。
髪は女性ホルモンが関係していることから、女性の頭髪は薄くならないといわれてきましたが、近年、薄毛に悩む方は急増しています。
卵巣や甲状腺機能の低下が隠れているかもしれないため、医療機関の受診が大切です。
粃糠(ひこう)性脱毛症
ひこう性脱毛とは、大量のフケが原因で起こる脱毛をいいます。通常の量と比べてはるかに多い頭皮を覆うほどのフケを放置すると、頭皮環境が悪化し抜け毛が増えます。
ステロイドの内服や外用薬で炎症を抑え、抗ヒスタミン薬や抗真菌薬を併用しながら治療をおこなうことが一般的です。
ヘアケアや栄養バランスの見直しなど日常生活の改善をおこない、早めに医療機関へ相談しましょう。
抜け毛がひどいときの対処法
抜け毛がひどい原因を明らかにするためにも、医療機関を受診し専門家の診断を受けるのが重要です。
抜け毛の原因は、精神的なものや生活習慣だけでなく、ホルモンバランスの乱れや潜在的な病気も考えられます。
自己判断ではなく、専門的な判断を仰ぐことで、抜け毛の原因を明確にできます。専門家の指導をもとにご自身に合った治療や対処法を実践すると、健康的な髪の毛を保つサポートが受けられるでしょう。
自分でできる抜け毛対策
抜け毛や薄毛対策として、日常的に自分でできる対策は以下の3つです。
- 生活習慣を見直す
- 頭皮の環境を整える
- ストレスをためない
それぞれ説明します。
生活習慣を見直す
抜け毛を予防するには、毎日の生活習慣が重要です。以下の4つは抜け毛のリスクに大きく関わってきます。
- 食生活
- 睡眠時間
- 飲酒
- 喫煙
食事での栄養バランスは、髪の健康をサポートします。なぜなら、髪の成長にはビタミンやミネラルが必要だからです。とくに重要な栄養素は以下のとおりです。
- 亜鉛
- ビタミンA
- ビタミンC
- ビタミンE
これらを多く含む以下の食材を取り入れて、バランスの良い食事で髪への栄養を補充しましょう。
- 牡蠣
- ナッツ
- ウナギ
- 鶏肉
- 豚レバー
- 納豆
- 卵
- 緑黄色野菜
- 海藻類
- キムチなど
睡眠不足はストレスホルモンの分泌を増加させ、髪の成長を妨げる可能性があります。十分な睡眠時間を確保し髪の健康維持が大事です。
過度な飲酒は肝臓に負担をかけ、栄養不足を引き起こし髪の健康に悪影響を及ぼします。
同じく、喫煙も髪にとってよくありません。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があり、必要な栄養や酵素が頭皮に運ばれず、抜け毛の加速につながります。
健康な髪には、血液から毛母細胞への十分な栄養吸収が必要です。日常的に喫煙する方は禁煙を心がけましょう。
頭皮の環境を整える
頭皮の環境を整えることは、抜け毛の予防のために欠かせない要素です。その理由は、健康な髪を生やすには、土台となる頭皮を良好な状態に保つ必要があるからです。
頭皮環境を整えるポイントは、主に以下の5つです。
- 血行促進:頭皮の血行促進は、髪の成長に不可欠です。頭皮マッサージや温かいシャワーの利用を心がけましょう。
- 清潔な頭皮:頭皮の清潔さは、健康な髪を育てるために重要です。適切なシャンプーと洗髪で、頭皮の汚れや余分な皮脂を取り除くことが大切です。
- 適切なpHバランス:pHバランスの適正は、髪の健康に影響を与えます。髪の毛に理想的なpH値は、4.5~5.5の弱酸性といわれています。頭皮と髪の毛に優しい、シャンプーやコンディショナーを選びましょう。
- 適切な保湿:頭皮の乾燥は、髪の成長が妨げる可能性があります。保湿で頭皮を健康的に保つのが重要です。
- 栄養素の供給:頭皮にはビタミンやミネラルが必要です。適切な食事やサプリメントで、頭皮に必要な栄養素を補給しましょう。
これらの対策を実践し、頭皮の環境を整えると、健康な髪の育毛につながるでしょう。
ストレスをためない
抜け毛を予防するためには、ストレスをためないことが非常に重要です。なぜなら、自律神経の乱れを引き起こすと血行が悪化し、髪に必要な栄養素が行き渡りにくくなるからです。
日頃からストレスをためないための、具体的な解消方法を紹介します。
- 食生活を改善する:バランスの取れた食事を摂ることが大切です。特に亜鉛や鉄分、たんぱく質、ビタミンを含む食品を積極的に摂取しましょう。
- 睡眠時間をしっかり確保する:十分な睡眠をとることで体の回復力が高まり、ストレスへの耐性が向上します。
- ストレスの原因が明確であれば解消する:ストレスの原因を特定し、できる限り排除することが重要です。ストレスを溜め込まないように心掛けましょう。
- 適度な運動を行う:運動は身体の新陳代謝を促進し血行を改善します。ストレスを軽減する効果があります。ウォーキングやヨガなど、自分が楽しめる運動を取り入れましょう。
- 正しいヘアケアをする:髪の毛を優しく扱い、過度な摩擦や熱によるダメージを避けることが大切です。適切なシャンプーとコンディショナーを使用し、頭皮の清潔を維持しましょう。
頭皮はもちろん、心身の健康維持のためにもストレスを溜め込まないようにしましょう。