「最近、抜け毛が増えているけれど、もしかして円形脱毛症なのかな?」
「円形脱毛症を進行させないためにやってはいけないことはなんだろう?」
「円形脱毛症になってしまったら、どんな薬を使用すればいいんだろう?」
そういった不安や悩みを抱えていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
円形脱毛症は、対処を怠ると症状が進行し、重症化する恐れがあります。そこで、この記事では、円形脱毛症とはどんな症状なのか、その原因や種類、飲み薬や治療法、発症したときにやってはいけないことなどを解説します。
病状の改善に向けて取るべき行動がわかるよう詳しく説明していますので、円形脱毛症に悩んでいる人はぜひ最後までご覧ください。
円形脱毛症でやってはいけないこととは?
すでに円形脱毛症と思われる症状が現れている場合、改善のためにやってはいけないことがあります。
以下の3点です。それぞれ詳しく解説します。
髪を洗わない・洗いすぎる
髪を洗わない、または過度に洗いすぎると頭皮環境が悪化するため、円形脱毛症を進行させる可能性があります。発毛には、清潔で健康的な頭皮環境が必要だからです。
抜け毛予防のために髪や頭皮への摩擦を減らそうと洗髪を控えることは、汚れや皮脂が毛穴に詰まる原因になります。毛穴が多量の皮脂でふさがれると、頭皮の状態が悪化し発毛を阻害してしまいます。
一方で、清潔な状態を維持しようと髪を洗いすぎた場合、良好な頭皮環境を保つために必要な皮脂が失われ、頭皮の潤いを維持できません。乾燥から来るかゆみが頭皮への負担を大きくし、円形脱毛症の改善に悪影響を及ぼします。
円形脱毛症には頭皮環境を整えることが重要であるため、1日1回のシャンプーを心がけましょう。
バランスの悪い食生活を続ける
円形脱毛症でやってはいけないこととして、バランスの悪い食生活もあげられます。食事の栄養は血液によって頭皮まで届けられるためです。
ビタミン不足であったり、カロリーや脂質が高かったりと栄養バランスが偏った食事を続けていると、以下のような影響を及ぼす可能性があります。
- 皮脂が過剰分泌して毛穴に詰まる
- 血行不良になり頭皮まで十分な栄養が届かなくなる
バランスの悪い食生活を続けると良好な頭皮環境を保てず、円形脱毛症が悪化するおそれがあります。髪を育むためには、タンパク質や亜鉛、ビタミン類などの栄養素をバランスよく摂りましょう。
体の隅々まで十分な栄養を届け頭皮環境が整うように、規則正しい食生活を心がけることが大切です。
症状が出ているのに放置する
頭皮や体に円形の脱毛が生じているにもかかわらず放置するのは、円形脱毛症でやってはいけないことのひとつです。円形脱毛症は早めに治療を開始しないと、脱毛範囲が広がったり増えたりします。
さらに、重症化すると完治が困難なうえ、再発率も高くなるため初期段階での治療が重要です。軽度な円形脱毛症は自然治癒する場合もありますが、発症原因や進行速度によっては悪化するケースも考えられます。
円形の脱毛を見つけたらなるべく早めに、AGA専門クリニックや皮膚科などの医療機関を受診しましょう。早期発見、早期治療が円形脱毛症の改善や再発予防につながります。
そもそも円形脱毛症とは
では、次にそもそも円形脱毛症とはどんなものなのかについて説明しましょう。
円形脱毛症とは、一部分または複数の箇所において、円形または楕円形に髪の毛が抜ける脱毛症のことをいいます。
10円ハゲと呼ばれることもありますが、10円玉以上の大きさになったり抜け毛が頭全体に広がったりするほか、重症の場合はひげやすね毛などの体毛まで抜けるケースもみられるなど症状はさまざまです。
また、AGA(男性型脱毛症)との違いとしては、老若男女問わず誰でも発症する可能性があること、ある日突然発症すること、脱毛範囲の境界線がはっきりとしているところなどがあります。
円形脱毛症の種類とその特徴
円形脱毛症の種類は、脱毛している範囲や数によって5つに大別できます。それぞれ説明していきます。
単発型円形脱毛症
円形脱毛症の中で最も多い「単発型」は、頭部の1カ所に円形もしくは楕円形の脱毛がみられます。約8割の方が1年以内に治癒するといわれていますが、まれに次段階の「多発型」に移行することがあるため注意が必要です。
多発型円形脱毛症
円形の脱毛が2カ所以上生じる「多発型」は、完治までは半年から2年程度かかるといわれています。また複数の脱毛箇所が合わさって拡大する多発融合型というタイプもあります。脱毛の範囲が頭皮の25%以上になると、重症と判断されます。
蛇行型円形脱毛症
後頭部から側頭部にかけて生え際に沿って脱毛が帯状に広がるのが「蛇行型」です。左右対称に発症し、蛇が通った後のようにみられます。複数年にわたって治療が必要です。
全頭型円形脱毛症
脱毛が頭部全体に広がってしまいすべての髪の毛が抜け落ちてしまう「全頭型」タイプですが、非常に治りにくいといわれており長期的な治療期間が必要になることが多いです。若い女性に多くみられることがありウィッグなどを使用しながら治療と向き合うことを勧められています。
汎発型円形脱毛症
全頭型の症状が進行した「汎発型」は頭髪のみだけでなく眉毛やまつげ、脇毛など全身の体毛まで抜けてしまいます。最も重症なタイプで全頭型と同様に長期的な治療が必要で、根気強く治療に向き合わなければなりません。
円形脱毛症の症状の進行過程
円形脱毛症には、初期症状から回復まで、特徴的な症状の過程があるのでご説明していきます。
治るまでの期間は発症している円形脱毛症の種類によって違いますが、単発型で軽症の場合は3~4ヵ月程度で治ることもあり、約8割の方が1年以内に治るといわれています。しかし重症化していくと長期間の治療期間が必要です。また進行速度にも個人差があります。
円形脱毛症の初期症状
- 何の兆候もなく突然頭皮が見える脱毛が始まる。
- 脱毛の形が円形または楕円形で、他との境界がはっきりしている。
- 爪の表面に点を打ったような小さなでこぼこができている(免疫系の異常が関与している)。
初期症状のまま治癒することもありますが、進行速度が人それぞれのため予想より早く進むこともあり、早めに病院を受診することをお勧めします。
進行中の症状
- 脱毛している周囲の髪の毛を引っ張ると痛みもなく簡単に抜ける。
- 抜けた髪の毛の根っこ部分が細く尖っている。
- 朝起きた時の枕に付いている抜け毛が多い。
- 脱毛している範囲が広がってきている。
回復期の症状
以下の症状は円形脱毛症が治る前兆といわれています。
- 脱毛した部分に細くて短い産毛が生えてくる。
- 脱毛した部分の頭皮に毛穴が見えるようになる。
- 脱毛している周囲の髪の毛を引っ張っても簡単に抜けない。
円形脱毛症の主な原因
円形脱毛症の原因は様々な説がありはっきりとした原因は解明されていないのが現状ですが、近年「自己免疫疾患」が原因として有力な説と考えられています。自己免疫異常につながるものやそれ以外に考えられる原因についてお伝えしていきます。
自己免疫疾患
免疫機能は通常外部からの異物や侵入物を攻撃して身体を守る機能ですが、その機能に何らかの異常が生じて自分の体の一部を敵と勘違いして攻撃してしまうことを自己免疫疾患と呼びます。
円形脱毛症は免疫機能の司令塔と殺し屋である「Tリンパ球」が毛根を異物とみなし攻撃することで、毛根にダメージが与えられ健康な髪の毛が突然抜け落ちてしまいます。しかしなぜこのような異常が起こるのかまだ明らかになっていません。
特に円形脱毛症を生じやすい自己免疫疾患は、橋本病なとの甲状腺疾患、関節リウマチ、重症筋無力症、異常性白斑、全身性エリテマトーデスなどが挙げられます。甲状腺疾患の約8%、尋常性白斑は約4%の患者が円形脱毛症を併発しています。そのため、円形脱毛症を発症したら、自己免疫疾患の有無を確認するために血液検査を行うことを検討しましょう。
参照:日本皮膚科学会|円形脱毛症ガイドライン診療ガイドライン(2017年版)
アトピー素因
アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎などのアトピー疾患を持ている人のことをアトピー素因といいます。円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因持っており、また半数以上が本人もしくは家族にアトピー素因がみられることから、深い関係があるのではないかと考えられています。
遺伝的要因
中国で行われた大規模な調査では、円形脱毛症患者の約8.4%が家族に円形脱毛症を発症していることが報告されています。また、欧米の調査でも一親等(親、こども)内の発症率が一般に比べて約10倍高いという結果が出ています。そのため、現時点では医学的根拠は明確にされていませんが、円形脱毛症には遺伝的要因のある可能性が高いと考えられています。
精神的ストレスの影響
強い精神的ストレスを受けた後に円形脱毛症が生じるケースがあることから、ストレスも一つの要因として挙げられています。また、ストレスは自己免疫疾患を誘発する要因ともなり得ります。
しかし、現段階ではストレスが円形脱毛症の原因となる科学的根拠はまだ示されていません。そのため「ストレスが円形脱毛症の原因になる可能性がある」程度にとどめておくのがよいといえるでしょう。
参照:日本皮膚科学会|円形脱毛症ガイドライン診療ガイドライン(2017年版)
円形脱毛症の治療法
円形脱毛症を自分で治すことは困難であるため、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。症状の重さや進行具合、年齢などを考慮して以下の4つから治療法を選択します。
局所免疫療法
局所免疫療法とは、スクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)やジフェニルサイクロプロペノン(DPCP)といった化学物質を脱毛部に塗布することで、わざとかぶれを起こさせて発毛を促す治療法です。
脱毛部分が広範囲、または症状が重い人に行われ、異常な働きをしているTリンパ球を抑制させて、自己免疫疾患の改善を目指します。
局所免疫療法のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・高い確率で症状の改善が期待できる |
デメリット | ・長期的な治療が必要になる ・自費診療になるため金銭的な負担が大きい |
90%という高い発毛効果が期待できますが、治療を中止すると再び症状が出る可能性があるため半年~1年以上の長期的な治療が必要です。
副作用としてかゆみが出ることもあります。アトピー性疾患がある人は症状が悪化する恐れがあるため、細心の注意を払って治療を行います。
局所免疫療法は保険適用されず自費診療となり、金銭的な負担が大きくなる治療法といえるでしょう。
ステロイド注射
ステロイド注射は、炎症を抑えたり免疫を抑制する効果があるステロイドを脱毛している部分に注射で注入する治療です。リンパ球の働きや攻撃を受けた毛根の炎症を抑え、免疫系を正常に戻す効果が見込めます。
ステロイド注射を行うときのメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・治療費が安い ・十分な効果が期待できる |
デメリット | ・痛みを伴う ・重症者には向いていない |
強い痛みを伴うため、脱毛の範囲が狭い人に行うことが一般的です。4〜6週間に1回の頻度で注射を行いますが、痛みを伴うことと注射部位が陥没する可能性があることに注意が必要です。なお、ステロイドの副作用が強いため、子どもにこの方法は適応されません。
このステロイド駐車は、単発型と多発型の円形脱毛症に高い発毛効果がありますが、全頭型や汎発型は注射範囲が増え、負担が大きくなってしまうため、他の治療方法が検討されます。
内服薬・外用薬の使用
市販されている育毛剤などを検討されている方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら効果がない可能性が高いといえます。なぜなら、育毛剤などはAGA向けに作られたもので、円形脱毛症とは根本的に病気の内容が異なるからです。円形脱毛症は、病院で適切な薬を処方してもらえば高い確率で完治することが可能ですので、AGAクリニックまたは皮膚科にて治療をしましょう。
具体的な円形脱毛症の薬としては、以下のようなもので改善が見込めます。年齢を問わず、症状が軽い初期段階で特に用いられる方法です。
内服薬 | ・ステロイド内服 ・グリチルリチン ・抗アレルギー薬(第2世代抗ヒスタミン薬) ・セファランチンなど |
外用薬 | ・ステロイド外用薬 ・塩化カルプロニウム外用液(フロジン外用液) ・ミノキシジル外用薬 |
内服薬や外用薬の治療では炎症や免疫機能、アレルギー反応の抑制効果がある薬を使用します。それぞれのメリットとデメリットを下記の表にまとめました。
メリット | <内服薬> ・効果が高い <外用薬> ・副作用が少ない ・年齢問わず使用できる |
デメリット | <内服薬> ・副作用を伴うこともある <外用薬> ・効果が薄い |
内服薬はかゆみ・不眠・高血圧など体内にも副作用の影響が出るケースがありますが、その分、外用薬よりも高い効果が期待できます。一方、外用薬は他の治療法よりも効果が薄い半面、副作用の発現は薬を塗布した部分にかゆみ・ニキビ・かぶれが生じるのみと比較的少なめです。ただし、円形脱毛症の症状が重度な場合には基本的に適用されません。
参照:フロジン外用液の薄毛に対する効果と副作用
紫外線療法
アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療にも用いられる紫外線療法です。進行度合いによっても異なりますが、軽症の症状で治療効果が出るまで15~20回程度の照射が必要です。副作用にはかゆみやヒリヒリ感、ひどい場合には水ぶくれが生じることがあります。