頭皮の湿疹を発症後、次第に抜け毛が目立つようになり、「はげ」や「AGA」になるのではないかと不安を抱えていませんか? 頭皮湿疹の原因が「脂漏(しろう)性皮膚炎」であれば、薄毛を直接引き起こすことはありません。しかし、放置していると抜け毛が進行するおそれがあります。
そこで今回は、脂漏性皮膚炎の原因や予防法、抜け毛との関係性などを詳しく解説します。予防法を把握すれば、抜け毛の悩みが軽減されるとともに、健やかな頭皮環境を維持できるようになるでしょう。
頭皮の湿疹を改善して薄毛を予防したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
脂漏性皮膚炎とは?
脂漏性皮膚炎とは、皮膚に赤みやかゆみ、湿疹を生じる疾患です。頭皮に発症した場合、フケが落ちるため「フケ症」とも呼ばれます。
常在菌の一種であるマラセチア菌が皮脂をエサにして増殖すると、脂漏性皮膚炎を発症します。脂漏性皮膚炎は、皮脂分泌が多い人がなりやすいため、日ごろから肌のテカリや頭皮のベタつきが気になる方は注意が必要です。
脂漏性皮膚炎とはげ・AGAとの関係性
脂漏性皮膚炎は「薄毛」や「AGA」と直接的な関係はありません。薄毛とAGAの原因は以下のようになっており、脂漏性皮膚炎の発症とは関係ないためです。
●薄毛・・・年齢、ストレス、遺伝、栄養不足、紫外線、染毛剤など ●AGA・・・遺伝、男性ホルモン |
脂漏性皮膚炎による頭皮の赤みやかゆみだけで、薄毛やAGAを引き起こすことはないといわれています。
しかし、かゆみに耐えられず爪でかいてしまうと、頭皮が傷ついたり毛穴が炎症を起こしたりするため、髪が抜けてしまう可能性も考えられるでしょう。また、皮脂で毛穴が詰まると頭皮環境に悪影響を及ぼすため、発毛を阻害するおそれもあります。
脂漏性皮膚炎を放置するとどうなる?
脂漏性皮膚炎を放置していると、症状が悪化したり病変部が広がったりするリスクが高まります。皮脂の分泌量が多いままでいると、マラセチア菌は増殖を続けるため、強いかゆみを感じるようになるでしょう。
かゆみが増すと爪でかいてしまうため、頭皮がダメージを受けます。また、毛穴が皮脂で詰まった状態が続いてしまうと、ベタつきや匂いも気になり始めるでしょう。
良好な頭皮環境を維持できないと、抜け毛が多くなるケースも考えられます。成人が脂漏性皮膚炎を発症すると、自然治癒するケースはほとんどなく慢性化しやすいため、適切な治療を受けるか否かで今後の状態が左右されるでしょう。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因は、次のようにさまざまです。
- 誤った方法でのヘアケア
- 偏った食生活
- 睡眠不足
- ストレス
- ホルモンバランスの乱れ
これらの生活習慣は、マラセチア菌のエサとなる「皮脂」を増やすことになるためです。それぞれ解説します。
誤った方法でのヘアケア
ヘアケア方法が間違っていると、脂漏性皮膚炎の原因となる皮脂を過剰分泌させたり溜め込んだりしてしまいます。洗髪回数が不足していたりすすぎ残しがあったりすると、取り切れなかった皮脂汚れが頭皮に蓄積されていくため、頭皮状態が悪化してしまうでしょう。
しかし、過度な洗髪も逆効果です。1日2回以上の洗髪は、うるおい保持に必要な皮脂まで流してしまいます。すると、頭皮を保湿しようと皮脂を過剰に分泌するようになるため、ベタつきやテカリが目立つようになるでしょう。
そのほかにも、頭皮タイプに合わないシャンプーの使用や皮脂汚れが落としきれない洗髪方法なども、頭皮環境を大きく左右します。
偏った食生活
偏った食生活も、脂漏性皮膚炎の原因のひとつといわれています。摂取する栄養は肌の健康状態に大きな影響を及ぼすためです。
とくに、揚げ物やラーメンなどの脂質の多い食事は、皮脂を過剰分泌させるため注意が必要です。また、ビタミンB群が不足していると、皮脂の分泌量をうまく調整できなくなります。
偏った食生活を続けていると栄養バランスが崩れるのはもちろん、血液がドロドロになり頭皮に十分な栄養が届けられなくなるでしょう。
頭皮に栄養が足りないと髪の成長に悪影響を及ぼすため、日ごろから脂質の多い食事が中心になっている方は注意が必要です。
睡眠不足
脂漏性湿疹の原因には、睡眠不足も挙げられます。睡眠時間が足りないと成長ホルモンの分泌が減少し、肌のターンオーバーが乱れてしまうためです。
健康な頭皮状態の維持には、一定のサイクルで細胞を生まれ変わらせる必要があります。肌の代謝が悪くなると、古い角質や汚れが留まってしまうため、結果的にマラセチア菌が増殖してしまう頭皮環境を作ってしまうでしょう。
また、睡眠不足は肌のバリア機能を低下させ、肌のうるおい成分を減少させます。肌の乾燥は、皮脂分泌を増加させるため脂漏性皮膚炎を発症しやすくなるでしょう。
ストレス
脂漏性湿疹の原因となる皮脂の過剰分泌は、ストレスによっても引き起こされます。ストレスがたまると交感神経が活発になり、皮脂分泌や発汗を促します。皮脂で毛穴が詰まったり頭皮が蒸れた状態になったりするため、頭皮環境の悪化につながるでしょう。
また、ストレスには血管を収縮させる作用があります。血管が収縮すると血行不良に陥り、頭皮に酸素や栄養が行き渡らなくなるため、健やかな頭皮を保てなくなる可能性が考えられます。
常に強いストレスを抱えている方は、皮脂の分泌量が異常になる可能性があるため、脂漏性皮膚炎の発症リスクが高まるでしょう。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、皮脂の分泌量を増加させるため、脂漏性皮膚炎の発症につながります。女性ホルモンが皮脂分泌を抑制するのに対し、男性ホルモンは皮脂の分泌を促す役割を持っています。
男性ホルモンは交感神経が優位になると増えるため、自律神経を整えることが大切です。
ストレスや不規則な生活は、ホルモンバランスを乱す原因になるといわれています。肌のベタつきはホルモンバランスの影響も考えられるため、生活習慣の乱れに心当たりがある方は要注意です。
脂漏性皮膚炎の症状
脂漏性皮膚炎の主な症状は、以下のとおりです。
- 赤み
- かゆみ
- 黄色がかったフケ
これらの症状は、頭皮や顔など、皮脂分泌が多い部分を中心に現れます。
生後0~12ヵ月の乳児が発症する「乳児型」と、思春期以降の成人が発症する「成人型」があります。基本的に乳児の脂漏性湿疹はスキンケアで完治しますが、成人が発症すると自然治癒は難しく、放置しているとほとんどの場合が慢性化を辿るでしょう。
慢性化すると強いかゆみを感じたり再発したりするため、早急に医療機関を受診し、適切な治療を開始することが重要です。
脂漏性皮膚炎の治療方法
脂漏性皮膚炎の治療には、主に外用薬を使用します。使われる外用薬の種類とその効果は次のとおりです。
種類 | 効果 |
ステロイド | 頭皮の炎症を抑える |
抗真菌薬 | マラセチア菌を抑制する |
かゆみや赤みなどがひどい場合は、ステロイドを用いて炎症を抑える治療法を取ります。
副作用として、塗布部分に以下のような症状が生じる場合があります。
- ニキビができる
- 毛が生える
- 赤くなる
- 薄くなる
- 萎縮する
体内への重篤な副作用はなく、比較的安全な治療法といえます。しかし、ステロイドは皮膚の免疫力が下がるおそれがあることから、長期的な使用は推奨されていません。
赤みやかゆみが軽くなったからと自己判断で使用をやめると再び症状が現れるケースがあるため、医師の指示を守り使用しましょう。
脂漏性皮膚炎になりやすい人の特徴
脂漏性皮膚炎になりやすい人には、次のような特徴があります。
【脂漏性皮膚炎になりやすい人の特徴】
- 食生活が乱れている
- 睡眠不足でストレスがたまっている
- 毎日洗髪しない
生活習慣が乱れていたり強いストレスが溜まっていたりすると、皮脂の過剰分泌を引き起こし頭皮の健康状態を悪化させるでしょう。また、洗髪が正しく行えていない方は皮脂汚れが蓄積され、マラセチア菌が増殖しやすくなります。
清潔で健康的な頭皮環境の維持が困難になるため、脂漏性皮膚炎の発症リスクが高くなるでしょう。
脂漏性皮膚炎の予防方法
脂漏性皮膚炎を予防するためには、規則正しい生活を送ることが大切です。以下のような生活習慣を心掛けると、皮脂の分泌量が正常になり、頭皮の状態を良好に保てます。
- 栄養バランスの整った食事
- 質の高い睡眠
- 適度な運動
- 正しいヘアケア
これらの習慣は、皮脂の分泌量を正常化させたり、汚れの蓄積を防いだりできます。
また、ターンオーバーが整い、肌のバリア機能も高まります。肌を保護する力が向上すると外部刺激に強くなるため、乾燥や炎症も起こりにくくなるでしょう。
脂漏性皮膚炎の予防には、健やかな頭皮環境の維持が重要です。規則正しい生活で体の内側からアプローチしましょう。