ピル使用後脱毛症

以前、分娩後脱毛症という記事で女性ホルモンバランスの乱れによる脱毛症のお話をさせて頂きました。

分娩後に起こる脱毛症のメカニズムとしては、妊娠すると女性ホルモンの一種であるエストロゲンが増加し、本来は妊娠前のように休止期に入る髪の毛の成長期が延長されるため、休止期に入る時期が先延ばしになるためです。

そのままエストロゲンの増加が続けば脱毛症は起こらないのですが、出産後や断乳後に本来の女性ホルモンバランスに戻るため、成長期を延長していた髪の毛が一気に休止期に移行することで急激に脱毛が起こるようになります。

避妊剤やPMS（月経前症候群）の緩和のためにしばしば用いられるピルでは、内服により人工的に妊娠状態を作り出しているため避妊効果が高い一方で、エストロゲンの作用により妊娠時と同様、内服中は脱毛が減り、内服中止により脱毛が増加する場合があります。

ほとんどの方の場合、半年から一年で元に戻るのですが、稀にびまん性脱毛症へと移行していくケースがあります。

男性型脱毛症のように、遺伝的要素を持ち合わせている方であればその確率は大きくなり、女性ホルモンバランスの乱れが脱毛症を誘発することとなります。

当院では、ピルの副作用で血栓が起こりやすいというリスクを回避するために、女性の患者様へ処方する抜け毛予防薬であるスピロノラクトンとの併服は禁止しています。

スピロノラクトンは利尿効果がある内服薬ですので、万が一脱水症状などで体が著しく水分不足となったときにピルの作用が加わり、より血栓の作られるリスクを上げてしまう可能性があると考えるためです。

医師や症状（脱毛症治療を除く）によっては併服を推奨する場合もあるため、ピルとスピロノラクトンのそもそもの相性が悪い訳ではありません。

どんな内服薬でも使用する場合は自己判断せず、薬の作用・副作用・飲み合わせに至るまで、必ず専門医に相談されることを強くお勧めいたします。