「自分の薄毛は、AGAなのか、別の脱毛症なのか……」
「できることなら自力で薄毛を治したい」
「薄毛・AGAに効果的な治療方法を知りたい」
このようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、薄毛の種類、薄毛・AGAの改善に有効な生活習慣や治療方法などについて解説します。
薄毛の種類
薄毛にはさまざまな種類があり、原因や治療法は症状によって異なります。
主な薄毛の種類は「AGA(男性型脱毛症)」「円形脱毛症」「脂漏性皮膚炎」「びまん性脱毛症」が挙げられます。以下でみていきましょう。
AGA(男性型脱毛症)
AGAとは、「Androgenetic Alopecia」であり、直訳すると「男性ホルモンによる脱毛症」となります。この名が示す通り、AGAは男性ホルモンが大きく関わっている脱毛症です。
主に頭頂部と生え際の薄毛が進行します。遺伝や男性ホルモンなどの影響によって起こる脱毛症であり、自然治癒や自力で治すのは困難といわれています。
内服薬や外用薬を使用し、抜け毛を予防したり、毛量が減った部位で発毛させたりすることも可能です。
円形脱毛症
円形脱毛症とは、一部分または複数の箇所において、円形または楕円形に髪の毛が抜ける脱毛症のことをいいます。
10円ハゲと呼ばれることもありますが、10円玉以上の大きさになったり抜け毛が頭全体に広がったりするほか、重症の場合はひげやすね毛などの体毛まで抜けるケースもみられるなど症状はさまざまです。
円形脱毛症は、根本的な治療法が見つかっていません。しかし、内服薬や外用薬、ステロイド局所注射や局所免疫療法などによって薄毛の進行を抑えることは可能です。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは、皮膚に赤みやかゆみ、湿疹を生じる疾患です。頭皮に発症した場合、フケが落ちるため「フケ症」とも呼ばれます。
脂漏性皮膚炎の原因は、マラセチア菌と呼ばれるカビの一種が関係しているとされます。主な治療法として、ステロイド外用剤を使用し、炎症を抑えるのが一般的です。
びまん性脱毛症
びまん性脱毛症とは、髪全体が薄くなる状態を指します。
以前は、加齢に伴うホルモンバランスの乱れで40代以上の女性に起こると考えられていましたが、近年20〜30代女性でも発症するケースが増加しています。自律神経やホルモンバランスの乱れ、栄養不足などが原因で生じます。
まばらに抜け毛が増えるため、症状の進行に気が付きにくい点に注意が必要です。治療法としては、内服薬や外用薬、自毛植毛などが挙げられます。
その他
上記以外では、たとえば、抜毛症によって薄毛になるケースがあります。抜毛症とは、不安や緊張、ストレスが原因で自ら髪の毛を引き抜いてしまう症状のことです。思春期の女性や学童期の子どもに多く、ステロイド剤や抗ヒスタミン薬、抗うつ剤などを服用して治療する必要があります。
抜毛症以外では、頭髪剤がしっか洗い流せていないことによる頭皮環境の悪化、ダイエットやストレスによる栄養不足、喫煙や食習慣の乱れで起こる血行不良、ホルモンの減少などが挙げられるでしょう。
薄毛・AGAを自力で治す方法はある?
では、次に薄毛・AGAを自力で治すことができるかについて、お答えしましょう。
こちらは、結論から述べると、薄毛・AGAを自力で治すことはかなり困難だといえます。
特にAGAの場合、その病態はホルモンバランスが崩れることであり、進行性の症状です。もちろん、生活習慣の改善や複数の治療法を組み合わせる等により進行を遅らせることはできますが、セルフケアのみで治すことは不可能に近いと覚えておきましょう。
AGAは発症したら完治しないって本当?
さらにもう一つ、AGAに関する疑問にお答えしておきましょう。
それは「AGAは完治するのか?」というものです。
こちらも結論から述べてしまうと、AGAを発症した場合、現在の医療では完治させることはできません。
ただし、発症したら終わりというものではなく、適切に対処することで症状の進行を遅らせたり、抑えたりすることは可能です。
AGAの進行度合いにもよりますが、薬剤治療などで増毛することや、増毛した状態を維持することなどは期待できます。
薄毛・AGA改善のために生活習慣を見直そう
生活習慣の見直しは、AGAや薄毛を完全に治すことはできませんが、進行を遅らせる効果は期待できます。AGAや薄毛は薬を用いた治療と並行し、以下のような生活習慣の見直しを図りましょう。
- 睡眠の質を向上させる
- 食生活を見直す
- 適度な運動をする
- ストレスを改善する
- 喫煙・飲酒の習慣を見直す
それぞれ解説します。
睡眠の質を向上させる
睡眠の質を向上させることは、AGAや薄毛の改善につながります。睡眠の質を向上させると、以下のような効果が期待できるからです。
- 成長ホルモンの分泌量の正常化
- 血行不良の改善
- エネルギー代謝の正常化
髪の健康には成長ホルモンが大きく関わっており、成長ホルモンが分泌されることで髪の毛の成長を助ける毛母細胞の活性化や髪たんぱく質量の増加が期待できます。
また、AGAや薄毛の進行を遅らせるためには、毛根への十分な血流量が必要です。
睡眠の質が改善されると血行不良が改善され、毛根に十分な栄養が行き渡るため、AGAや薄毛の進行抑制に効果的です。さらに、睡眠の質が向上すると、エネルギー代謝が正常に作用し、毛母細胞の活性化を促します。
睡眠の質を改善されるためのポイントは、以下のとおりです。
- 起床後に朝日を浴びて、体内時計をリセットしておく
- 就寝前1〜2時間前に入浴し、身体を温める
- できるだけ静かな部屋を寝室にする
- 日中に適度な運動をする
- 朝食をしっかりと摂り、就寝前の食事は控える
- 就寝前の1時間はスマホ視聴などを控え、リラックスする
- カフェインの摂取を極力控える
- 過度の飲酒を控える
参考:厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023
AGAや薄毛の進行を遅らせるために、まずは無理のない範囲でできることから始め、睡眠の質を向上させていきましょう。
食生活を見直す
AGAや薄毛の治療には、食生活の見直しも有効です。食事で摂取する食事栄養素は、髪の毛の健康には欠かせない、重要な原料だからです。髪の毛に必要な、以下の栄養を積極的に摂取できると、薄毛の進行を遅らせることが期待できます。
- たんぱく質
たんぱく質に含まれる「ケラチン」は、髪の毛の原料として大切な栄養素です。たんぱく質は、肉・魚・乳製品・大豆などに豊富に含まれており、食事で摂取が難しい場合には、プロテインの飲用も効果的です。 - ミネラル
ミネラルは5大栄養素のひとつであり、筋肉や骨の形成など身体を支える重要は作用があります。ミネラルの中でも亜鉛は、髪の毛の成長に欠かせない栄養素で、毛母細胞の増殖を促進し、薄毛の原因となる男性ホルモンの働きを抑制する効果も期待できます。ミネラル(亜鉛)を多く含む食品は、牡蠣・豚レバー・牛肉赤み・卵・カシューナッツなどが代表的です。 - ビタミン
ビタミン類も、髪の毛の成長を促進する重要な作用を持つ栄養素です。とくに、ビタミンA、ビタミンBは代謝をアップさせたり、頭皮環境を改善したりする働きがあるため、積極的に摂取したいものです。ビタミンAを多く含む食品には、レバー・バター・卵黄・にんじん・モロヘイヤなどがあります。ビタミンBを多く含む食品には、豚肉・レバー・ハツ・にんにく・魚類などがあります。
薄毛の進行を抑制するために、普段の食生活を見直してみましょう。
適度な運動をする
適度な運動習慣をつけることも、AGAや薄毛改善に効果的です。日常的に運動を行うことで代謝が上がるとともに、全身の筋肉量が増え、血流量が増えるからです。
血流量が増えると、髪の毛の成長に必要な栄養素が行き渡りやすくなるため、薄毛の進行予防になります。AGAや薄毛の進行を遅らせるために、取り入れたい運動習慣は、以下のとおりです。
- ウォーキング
- サイクリング
- 筋力トレーニング
急に毎日行うのはハードルが高いと思われる人もいるかもしれません。まずは、週に3日程度、1日30分以上を目安に取り入れてみましょう。
筋力トレーニングも効果的ではありますが、知識がないまま行うと、筋肉や関節を痛めてしまう恐れがあります。決して無理をせず、ジムのスタッフやパーソナルトレーナーなど筋力トレーニングに詳しい人にアドバイスをもらってから行うようにしましょう。
ストレスを改善する
ストレスの改善は、自律神経が整うため、AGAや薄毛の進行予防に効果的です。ストレスが改善されると副交感神経が優位となり、血管や筋肉がゆるんで全身の血流量が増えるからです。
すでに述べたように、全身の血流量が増えると、頭皮に必要な栄養が行き渡りやすくなり、薄毛の進行を遅らせます。
さらに、ストレスの蓄積は睡眠の質を低下させ、ホルモンバランスを乱すため、髪の成長を阻害する要因になります。
ストレスの改善は、AGAや薄毛の進行を遅らせるため、ストレスが蓄積されないよう、規則正しい生活やリラックス時間の確保を心がけましょう。
喫煙・飲酒の習慣を見直す
喫煙や飲酒は心身の健康はもちろん、髪の毛に対しても有害です。お酒を大量に飲むと、髪の毛に必要な栄養素であるアミノ酸をアルコール分解に使ってしまうため、髪の毛の栄養が不足してしまいます。飲酒習慣が長く続くと、髪の毛の栄養不足が深刻化し、薄毛の原因になります。
また、喫煙は、血管収縮作用があり、全身の血行を悪化させるため髪の毛には悪影響しかありません。
喫煙や飲酒習慣の見直しは、AGAや薄毛の進行予防につながるため、意識的に取り組んでいきましょう。
AGAの治療方法
AGAの主な治療方法は「薬剤治療」「植毛・増毛」「光治療」「注入療法」の4つです。
治療方法 | 概要 |
薬剤治療 | 内服薬と外用薬の2種類があり、脱毛抑制や発毛効果を得られる |
植毛・増毛 | 治療成功率は高いが、治療にかかる費用が高め |
光治療 | LEDの光を利用し、毛母細胞を活性化、薬剤治療と併用可能 |
注入療法 | 髪の毛の成長因子を直接頭皮に注入する治療方法 |
AGAは進行性の脱毛疾患であり、症状が進行してしまうと、治療にかかる時間はおろか、治療にかかる費用も高額になります。そのため、AGAは早期に治療を開始することが大切です。
また、AGA治療で重要なヘアサイクルは、生涯で決められた回数しか行われません。そのため、AGAの特徴であるヘアサイクルの短縮化を早期に食い止め、早い段階でヘアサイクルを正常化させる必要があります。
上の表のどの治療法もメリット・デメリットが存在し、症状や進行具合によって選択されます。ただし、いずれも治療効果を高め、治療にかかる費用を抑えるには、早めの治療がおすすめです。
薬剤治療
AGAの治療で最も多く選択されているのが、薬剤治療です。薬剤治療では、AGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を阻止したり、毛母細胞を活性化させたりなど、個人の状態に合った薬剤の選択ができます。
薬剤治療に使われるのは、主に「内服薬」と「外用薬」の2種類です。
内服薬
AGA治療に用いられる内服薬は主に3種類あり、抜け毛を抑えたり、発毛を促進したりする働きが期待できます。
それぞれの効果や副作用は、以下のとおりです。
薬剤名 | 期待できる効果 | 副作用 |
プロペシア錠 (フィナステリド錠) | 脱毛抑制、状態の維持 | 勃起不全、性欲の減退、肝機能障害など |
ザガーロ錠 (ディタステリド錠) | 脱毛抑制、状態の維持 | 勃起不全、性欲の減退、肝機能障害など |
ミノキシジルタブレット | 発毛促進 | 多毛症、頭痛、立ちくらみなど |
内服薬は、脱毛抑制や状態の維持、発毛促進など、AGAに対する確かな効果が実証されているものの、副作用や初期脱毛といった症状が生じるリスクがあります。
初期脱毛は、治療の段階で髪の毛が正常なヘアサイクルに戻っている証拠であり、数ヶ月ほどで落ち着く症状です。
しかし、副作用の場合は、症状があるにも関わらず服用を続けると健康に影響するため、治療を中断し、医師に相談する必要があるでしょう。
とはいえ、AGAには効果的な治療方法です。医師の指示のもと、ご自身の状態に合った薬を選択し、服用するようにしましょう。
外用薬
AGA治療で用いられる外用薬には、ミノキシジルがあります。ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬に使用されていた薬で、血管拡張効果があります。
血管が拡張して血流が促進されることで、毛母細胞が活性化し、発毛を促すのが特徴です。
ミノキシジルも発毛効果は実証されていますが、初期脱毛やかゆみ、発疹、めまい、頭痛などの副作用があることも覚えておきましょう。
植毛・増毛
植毛は、頭皮に髪の毛を植え込む方法です。植毛のメリットとデメリットは、以下を参考にしてください。
【植毛のメリット】
- 治療成功率が高い
- 自毛であれば自然な仕上がりが手に入り、半永久的な効果を得られる
- 人工毛であれば短時間で髪のボリューム増やせ、毛髪の密度を調整できる
【植毛のデメリット】
- 自毛植毛の場合、治療費が高く、治療に時間がかかる
- 人工毛植毛の場合、感染症のリスクがあり、定期的なメンテナンスが必要
一方で、増毛は自分以外の髪の毛を、残っている毛に結びつけて増やす方法です。増毛のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【増毛のメリット】
- 施術直後から髪のボリュームがアップする
- 手術が不要なため、副作用や合併症のリスクが低い
- 髪の色や質感を自由に選べる
【増毛のデメリット】
- 定期的にメンテナンスに通う必要がある
- ランニングコストが高い
- 薄毛が進行していて結びつける毛が少ない場合、効果が得られにくい
植毛や増毛を検討する人は、上記のメリットとデメリットを参考に判断するようにしましょう。
光治療
光治療は、LEDの光を利用した薄毛の治療方法です。LEDの光を頭皮の奥の方まで照射し、毛母細胞を活性化させることで、発毛や育毛を促進します。
安全性が高く、副作用もありませんが、効果を得るためには通院しなければなりません。
内服薬や外用薬と併用できるため、より確実に効果を得たいという人におすすめの治療方法です。
注入療法
注入療法とは、メソセラピーとも呼ばれ、発毛を促進する成長因子を頭皮に直接注入する治療方法です。頭皮への注入は、注射器や炭酸ガス、レーザー照射など、さまざまな方法を用います。どの方法でも、痛みが少なく、麻酔なしで施術を受けられるのが特徴です。
注入療法のメリットは、一度に複数の薬剤成分を注入できる点です。脱毛の進行抑制効果があるプロペシアをはじめ、髪の健康に有効な亜鉛やビタミン類も注入できます。
ただし、効果を得るためには、約6ヶ月〜1年の間、通院する必要があります。