「HARG療法って詳しくは知らないけど危険性はないのかな…」
「効果はあっても費用は高いんでしょ?」
「AGA内服薬とどっちがいいの?」
薄毛治療のひとつとして知られるHARG療法ですが、断片的にしか知らないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、自分にとってより適切なAGA治療を知りたい方に向けて、HARG療法の特徴や効果、メリット・デメリットなどについて説明します。
HARG(ハーグ)療法とは
HARG療法とは、幹細胞から抽出された成長因子と、ビタミンなどが含まれたHARGカクテルを頭皮に注入することにより、発毛を促進する毛髪再生治療です。
HARGは「Hair Re-generative therapy」の頭文字を取った言葉で、内服薬や外用薬、植毛、育毛メソセラピーなどと並んでAGAの治療方法のひとつとして知られています。
AGA以外では、円形脱毛症、FAGA(女性のAGA)、女性のびまん性脱毛症、原因不明の薄毛、AGA内服薬で効果が出ない方、カツラや植毛ではなく自分の髪を生やしたいといった方におすすめの治療法です。
HARG療法の特徴
HARG療法の特徴は、以下の2つです。
- AAPEを使用する
- 施術が受けられるのは特定の医療機関のみ
HARG療法は成長因子などが入ったAAPEを用いた方法で、認定を受けた医療機関でのみ受けることができます。
AAPEを使用する
HARG療法では、AAPEパウダーが用いられます。AAPEとは「Advanced Adipose-derived stem cells Protein Extracts」の頭文字であり、ヒト脂肪由来幹細胞のタンパク質抽出物が凍結乾燥されたものです。
AAPEパウダーには150種類以上の成長因子が含まれており、それぞれが相互作用をすることによって発毛や育毛効果が期待できます。
成長因子は細胞間の情報伝達を担って、成長ホルモンの分泌や傷の修復などに関与しているタンパク質です。具体的には以下のような成長因子がAAPEに含まれています。
- VEGF(血管内皮細胞成長因子)
- HGF(整体細胞成長因子)
- PDGF(血小板由来成長因子)
- Basic FGF(線維芽細胞成長因子)
- KGF(ケラチノサイト成長因子)
- TGF beta1(トランスフォーミング成長因子)
- Collagen, Fibronectin(コラーゲン, フィブロネクチン)
- SOD(活性酸素除去成分) など
HARG療法ではどの医院であっても同じAAPEが使用されることが決まっている一方で、育毛メソセラピーでは、成長因子・AGA薬・頭皮環境を整える栄養素などが医院独自でブレンドされたものを注入します。そのため、施術を受けるクリニックによって薬の成分に違いがあります。
施術が受けられるのは特定の医療機関のみ
HARG療法は、日本医療毛髪再生研究会の認定を受けた医療機関でのみ受けることが可能です。医療行為にあたるため、育毛サロンやエステなどでは受けることができません。
また、AAPEを使用することが決まっているため、どの医院で受けても注入するものは変わらないのも特徴です。
HARG療法で期待できる効果
HARG療法により期待できることは、発毛や育毛効果、抜け毛の予防効果です。
頭皮に注入するものには、成長因子だけでなく、ビタミンやアミノ酸など髪の成長に必要な栄養素も含まれています。男女問わず毛母細胞などの発毛組織に働きかけることができるため、発毛と育毛、抜け毛予防が期待できるでしょう。
しかし、必ずしも効果が期待できるわけではありません。フィナステリドやミノキシジルなどの内服薬や外用薬を併用しながら、治療を進めていくことを推奨される場合もあります。
HARG療法の副作用
HARG療法では注入を行うため、頭皮の内出血や一時的な痛み、かゆみ、発疹などの症状がでることがあります。いずれも軽度なものが多く、重篤な症状が発生することは少ないのが現状です。
AAPEパウダーには自然免疫系を活性化させるサイトカインが含まれているため、がん細胞や病原体の排除に役立つことから、アレルギー反応などの副作用は少ないといわれています。
また、注意点としては、パーマやカラーはHARG療法の施術期間中にはできず、施術開始の2週間以上前に済ませておく、もしくは最終の施術から2週間後以降にする必要があります。髪のセットやシャンプーは可能ですが、ブラシや指・爪などで強く刺激せず、整髪料は少なめにした方がよいでしょう。
HARG療法の施術方法
HARG療法の施術方法は、主に以下の6つであることが多いです。医療機関によって対応している施術方法に違いがあるので、確認しておくとよいでしょう。
施術方法 | 概要 |
パピュール法 | 盛り上がりを作るように真皮に注入する方法 |
ナパージュ法 | 真皮より下にある皮下組織へ細かく注入する方法 |
ダーマローラー法 | 極細針のついたローラーで薬を注入する方法 |
ノーニードル法 | 電気刺激や炭酸ガスを利用して頭皮に薬を浸透させる方法 |
フラクショナルレーザー法 | 医療用レーザーを使い、頭皮に薬を注入する方法 |
エレクトロポレーション法(電気穿孔法) | 電気を使用して薬を頭皮に注入する方法。皮膚に一時的小さな空洞を作ってそこから薬を注入する |
よく使われる施術方法はパピュール法とナパージュ法で、注射針で頭皮に薬を注入する方法です。効果が出やすいものの、痛みを伴う可能性があります。
それ以外の4つの施術方法は、比較的痛みを感じにくいのが特徴です。どの施術がよいかは専門のクリニックで必ず相談しましょう。
HARG療法にかかる費用
HARG療法の料金は、施術を受けるクリニックによって値段にばらつきがあります。料金の目安は、1回のトライアルで8万円ほど、1クール(6回〜9回)で40万円〜60万円であることが多いでしょう。保険適用外なので高額になりやすく、安いところでも頭部の1/3への使用で6万円近くは想定しておいたほうがよいです。
費用を抑えたい場合は、1回ごとではなく、1クールまとめて申し込むことで結果的に費用を抑えられることが多いでしょう。
HARG療法は他の薄毛治療よりも高額ですが、治療期間や総額の比較、毎日の服薬がいらないこと、通院やアフターケアなどの手間を総合して考えると、HARG療法にメリットを感じる方もいます。
HARG療法を行うメリット
HARG療法のメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 根本的な薄毛治療に取り組める
- 傷跡が残りにくい
- 男性・女性どちらでも受けられる
- 治療後は年に数回のメンテナンス治療で良い
HARG療法は成長因子などを注入して毛母細胞に直接働きかける治療なので、他の治療法より薄毛や抜け毛に根本的なアプローチが可能です。
また、植毛などと比較すると頭皮に傷が残りにくい点や、内服薬のように性別を選ばず受けられる場合もある点もメリットといえるでしょう。
治療回数や期間についても、他の方法よりメリットを感じることがあるかもしれません。HARG療法では、約半年ほど3~4週間に1回の継続治療を終えた後は、1年間に数回のメンテナンス治療で発毛状態を維持できる場合もあります。
HARG療法を行うデメリット
HARG療法には、以下のようなデメリットもあります。
- 毛母細胞がないと効果が期待できない
- 痛みを伴うことがある
- 料金が高額である
- 発毛までに数ヶ月はかかる
HARG療法は、毛母細胞に働きかける治療方法です。すでに薄毛が進行していて毛母細胞がない場合には、効果を期待することは難しいでしょう。この場合は植毛など他の方法を検討する必要がありますので、ご自身の状態がわからない方は一度診察を受けることをおすすめします。
副作用でも触れましたが、注入時や注入後に痛みや痒みを感じることもデメリットとして挙げられます。気になる方は、表面麻酔を採用している医院や、痛みに配慮した注入法や施術方法に対応している医院を検討するとよいでしょう。
また、HARG療法の料金は、他の薄毛治療に比べて高額になりやすいことがデメリットです。料金は1クール分をまとめて購入すると費用を抑えられるかもしれません。最終的に治療期間・手間・費用などがどれくらいかかるかを考えることも大切ですが、「高額な料金を払っても効果が出なかったら…」と不安な方は、内服薬など取り組みやすい治療法から検討することをおすすめします。
また、HARG療法は3週間~4週間に1度注入を行う治療で、治療開始から3ヶ月〜6ヶ月ほどで効果を感じる方が多い傾向にあります。必ずしも治療後すぐに効果が得られるものではないと留意しておきましょう。
HARG療法に関するよくある質問
HARG療法に関するよくある質問を紹介します。
Q.HARG療法の治療期間はどのくらいですか?
HARG療法の治療期間は、約6ヶ月であることが多いです。半年かかる理由は、3~4週間に1回の施術を6~9回受ける必要があるため、半年ほどかかります。
この治療期間が終わった後も、年に1~2回のペースでメンテナンス治療が必要になるでしょう。
Q.HARG療法に痛みはありますか?
注入時や注入直後は、注入針によって頭皮に痛みを感じる場合があります。
麻酔の使用や痛みに配慮した施術方法などがありますが、施術方法によっては痛みに配慮された分、注入針を用いる場合よりも効果が実感しにくいこともあるため、医師に相談して納得できる方法を選ぶとよいでしょう。
Q.HARG療法は危険ですか?
AAPEのもとであるヒト由来の脂肪幹細胞は毒性がなく、安全に局所使用できることが結論付けられています。
注入による痛みやかゆみなどを除けば、基本的には危険ではないといわれています。
参考:Dae Hyun Ha et al.(2020). Toxicological evaluation of exosomes derived from human adipose tissue-derived mesenchymal stem/stromal cells. Regulatory Toxicology and Pharmacology.Vol.115.