「最近、抜け毛が増えている気がするけれど、もしかして何かの病気?」
「なんで薄毛が起きているのか原因を知りたい」
このように、髪に関する不安や疑問を抱いている女性も多いのではないでしょうか。事実、最近は年配の方だけでなく、下は20代女性からもお悩みの声が届きます。
健康な女性の抜け毛は、1日平均50~100本程といわれており、抜け毛の本数が100本に達しない程度であれば、問題ないと考えられています。ただし、薄毛が急激に進行したり、抜けた毛が細く弱々しいなどの場合には、髪や頭皮に問題が起こっている可能性があるため、注意が必要です。
では、どうしてそのような抜け毛が起きてしまったのでしょうか。本記事では、女性の髪の毛が抜ける病気や女性に起こる薄毛の原因・脱毛症の種類などを解説します。現在悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。
女性の髪の毛が抜ける病気とは
一般的な薄毛の理由を述べていく前に、病気の可能性からお伝えしておきたいと思います。
まず、女性特有の病気である子宮頸がんや子宮筋腫、子宮ポリープ、乳がんなどは、脱毛症を引き起こす可能性が高くあります。
また、以下も抜け毛の増加要因として考えられる病気です。
- 甲状腺の疾患(バセドウ病や橋本病など)
- 膠原病(全身性エリテマトーデスや全身性強皮症など)
- 鉄欠乏性貧血
- 梅毒
- 薬剤性脱毛症
- 新型コロナウイルス感染症
薄毛や抜け毛が何かの病気のシグナルになっている可能性もあります。少なくとも1年に一度の婦人科健診を行い、少しでも異変を感じた際には積極的に検査をしてみることも大事です。
女性の薄毛の原因
それでは、次に病気ほど重篤ではないものの、女性の薄毛や抜け毛の要因となる原因について、お伝えします。
主な理由としては、以下の5つです。順に説明してきましょう。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは女性が薄毛になる原因の一つです。年齢を重ねると、女性ホルモン「エストロゲン」が減少し、ヘアサイクルが乱れて髪が早く抜けてしまいます。さらに髪が生えるまでに時間がかかるようになるため、薄毛につながります。
なお、このホルモンバランスの乱れは、加齢のみが原因ではありません。たとえば、20代女性でも極端な食事制限を伴うダイエットなどによって薄毛を発症することがあります。健康を損なうほどの食事制限は、体に必要な栄養素が不足し、頭皮の血行不良を起こすとともに生理不順をきたすため、ホルモンバランスを乱して髪の成長に影響を与えてしまうのです。
女性の場合、女性ホルモンの働きにより、薄毛の原因となる男性ホルモンが抑制されるため、薄毛になりにくいとされています。しかし、ホルモンバランスの乱れによって女性ホルモンが減少すると、女性であっても男性ホルモンが増加してしまいます。こうなると、女性にも薄毛の症状が起きやすくなってしまうのです。
遺伝
女性の薄毛は遺伝による影響もあります。
薄毛の原因となる「ジヒドロテストステロン(DHT)」は、どちらも女性の体内にも存在する存在する、還元酵素「5αリダクターゼ」と男性ホルモン「テストステロン」が結合することで生成され、抜け毛などの症状を引き起こします。
そして、この5αリダクターゼは遺伝する可能性が高いとされています。そのため、家族で薄毛の方がいる場合は、女性の場合であっても予防の検討が必要になるのです。
過度なヘアカラーやパーマ
繰り返し行われるヘアカラーやパーマは、頭皮や髪の毛へのダメージが深刻化し、薄毛を発症させる原因となります。カラー剤やパーマ剤は薬剤であり、健康な頭皮に負担をかけてしまうからです。
また、髪の長さを自由自在に調節できるヘアーエクステンション(エクステ)も、頭皮や髪の毛への負担が大きく、毛根にダメージを与えます。
心当たりのある人は、過度にならないようにしてください。
関連記事:ヘアカラーによる頭皮のダメージに注意!髪染めは禿げる原因になるのか解説
生活習慣の乱れ
女性の薄毛の原因の一つに、生活習慣の乱れが挙げられます。薄毛の要因となる生活習慣の乱れの具体例は、以下のとおりです。
【生活習慣の項目と理由一覧】
項目 | 理由 |
偏った食事や食生活の乱れ | 髪の毛に必要な栄養素が行き届かなくなる |
睡眠不足 | 睡眠中に「成長ホルモン」が分泌されにくくなり、髪の毛が育ちにくくなる |
運動不足 | 頭皮に血行不良を起こし、髪の毛が細くなり、抜けやすくなる |
過度な飲酒 | 摂取したアルコールが必要な栄養素を分解してしまい、栄養不足を起こす |
喫煙 | 血管を収縮させ、髪の毛や頭皮に必要な栄養素が行き届かなくなる |
このように、生活習慣の乱れは髪の成長に悪影響を及ぼします。特に近年は、寝る直前までスマートフォンを触り、動画やSNSなどを見ている方が増えていますが、こういった習慣も知らない間に薄毛を助長させているかもしれません。
心当たりのある方は、規則正しい生活習慣を意識して、薄毛を防ぎましょう。
ストレス
ストレスは健康にもよくないほか、薄毛を引き起こす原因です。ストレスが蓄積されると自律神経が乱れ、血行不良につながります。頭皮の血流が滞ると、髪の生成に必要な栄養素が届きにくくなり、薄毛のリスクが高まります。
仕事・人間関係・育児など、日常的に感じるストレスは発散しないと徐々にたまっていきます。気づかない間に薄毛を引き起こす場合もあるため、日頃からストレス発散方法を見つけておくことが必要です。
女性に起こり得る薄毛(脱毛症)の種類
女性に起こり得る薄毛(脱毛症)には種類があります。下記の表にて薄毛の種類と概要をまとめました。
薄毛の種類 | 概要 |
びまん性脱毛症 | つむじや分け目から髪の毛が細くなり、髪全体が薄くなる脱毛症 |
FAGA | ホルモンバランスの乱れにより起こる脱毛量 |
脂漏性脱毛症 | 頭皮に皮脂が多く分泌され、頭皮環境が悪化した脱毛症 |
牽引性脱毛症 | 同じ方向に髪の毛を結び、生え際や分け目から髪の毛が薄くなる脱毛症 |
円形脱毛症 | 頭部に円形や楕円形に髪の毛が抜け落ちる脱毛症 |
粃糠性脱毛症 | 頭皮に乾燥したフケが増加して髪の毛が抜け落ちる脱毛症 |
産後脱毛 | 妊娠中と産後のホルモンバランスが崩れたことによる脱毛症 |
それぞれ詳しく解説します。
びまん性脱毛症
びまん性脱毛症とは、髪全体が薄くなる状態を指します。
以前は、加齢に伴うホルモンバランスの乱れで40代以上の女性に起こると考えられていましたが、近年20〜30代女性でも発症するケースが増加しています。ホルモンバランス以外の原因でも発症し、誰でも発症する可能性があります。
びまん性脱毛症は、髪の毛が細くなることで分け目の広がりやつむじ周辺の薄毛が目立つようになり、広範囲に広がるのが特徴です。
ちなみに、次に登場するFAGAと同一のものとされることもありますが、厳密には髪全体が薄くなるびまん性脱毛症のうち、女性ホルモンの減少により発症するものをFAGAとして分類しています。
FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGAとは「Female Androgenetic Alopecia」の略で、女性男性型脱毛症(女性に起こる男性型脱毛症)ともいいます。
主にホルモンバランスの乱れを原因として、女性ホルモンが減少する更年期に発症するケースが多いといえます。
男性に起こるAGAの場合は頭頂部や生え際の薄毛が目立つ脱毛症ですが、女性に起こるFAGAの場合は頭部全体が薄くなる特徴があります。FAGAは進行性の疾患のため、放置していても自然治癒は難しいでしょう。
脂漏性脱毛症
脂漏性(しろうせい)脱毛症とは、頭皮に皮脂がたまることで頭皮環境が悪化し、薄毛になることです。
頭皮に皮脂が増えると頭皮がベタつき、フケや湿疹、炎症などを招き、脂漏性皮膚炎を発症します。この脂漏性皮膚炎が悪化すると抜け毛が進行し、脂漏性脱毛症へとつながります。
皮脂が過剰に分泌させる原因は、以下のとおりです。
- 脂質が多い食べ物を好んで食べる
- シャンプーをする回数が少ない
- 過度にシャンプーをしている
- ストレスがたまっている
- 睡眠が足りていない
上記の生活習慣を見直し、頭皮のベタつきと薄毛を防ぎましょう。
牽引性脱毛症
牽引性(けんいんせい)脱毛症とは、髪の毛を強く結び続けた結果、生え際や分け目から髪の毛が薄くなる症状を指します。
髪の毛を同じ方向に引っ張る行為は、頭皮に負担をかけ、血行不良につながります。こうして血行不良を起こした頭皮や髪の毛には栄養が行き届かなくなり、薄毛が進行してしまうのです。
牽引性脱毛症が発症しやすい状態は、以下のとおりです。
- 毎日同じヘアスタイルで髪の毛を結んでいる
- ヘアーエクステンションをしている
- カチューシャやヘアバンドを頻回に使用している
- 日常的に帽子やヘルメットを被っている
頭皮を引っ張らないようなヘアスタイルにしたり、ゆとりのある帽子を選択したりしてみてください。
円形脱毛症
円形脱毛症は、円形や楕円形に髪の毛が抜け落ちる症状です。男女関係なく起きる薄毛症状であり、脱毛箇所が1カ所だけにみられる単発型や、2カ所以上みられる多発型があります。
明確な原因は解明されていませんが、考えられる要因としては以下が挙げられます。
- 遺伝
- ストレス
- 免疫異常
- ホルモンバランスの崩れ
- アトピー体質
一度発症すると、再発しやすい薄毛症状です。生活習慣を見直してストレスを解消し、再発防止を意識しましょう。
関連記事:女性の円形脱毛症の原因は?年代別の原因や早く治す方法を解説
粃糠性脱毛症
粃糠性(ひこうせい)脱毛症とは、乾燥したフケが毛穴を防ぐことで起こる薄毛です。脂漏性脱毛症はベタつきがあるフケなのに対し、粃糠性脱毛症は乾燥したフケで頭皮環境を悪化させます。
フケが増える原因は、頭皮に合わないシャンプーの使用や、トリートメントのすすぎ残しです。粃糠性脱毛症は、肌が敏感な人ほど発症しやすくなります。
粃糠性脱毛症を防ぐには、体質にあったシャンプーを使用し、すすぎ残しをなくし、乾燥したフケを少なくすることです。
産後脱毛
産後脱毛は、出産後に一時的に抜け毛が進行する脱毛症です。分娩後脱毛症ともいいます。
女性は妊娠すると女性ホルモンの「エストロゲン」や「プロゲステロン」が急激に増加し、妊娠前に比べ、体が女性ホルモンで満たされた状態になります。しかし、出産後には女性ホルモンの分泌量が急激に減少してしまう(妊娠前に戻る)ので、この落差でホルモンバランスが乱れ、脱毛症状が起きてしまいます。
とはいえ、産後脱毛は一時的なものであり、病気ではありません。多くの場合、出産から2~3ヵ月がピークであり、時間の経過とともに徐々にもとの状態に戻ります。
気になる方は、帽子を被ったり、ヘアスタイルを工夫したりするといいでしょう。時間が経っても改善しない場合は、他の要因が潜んでいる可能性があるため、医療機関を受診してください。
女性の薄毛を改善するには
ここからは、女性の薄毛を改善する方法を紹介します。
生活習慣を見直す
髪に栄養が行き届かないと薄毛になるため、規則正しい生活を送ることが大切です。
- バランスのよい食事をとる
- 睡眠時間を確保する
- 飲酒や喫煙を控える
髪の原料となるタンパク質や、健やかな頭皮環境を育むビタミンB類などを積極的に取り入れることがおすすめです。
あわせて寝る前に軽くストレッチする、入眠直前までスマホを見ないといったことで良質な睡眠がとれるようにしましょう。寝ている間に分泌される成長ホルモンは、髪の生成をサポートします。
日常的に飲酒や喫煙する方は、できるだけ控えることがお勧めです。アルコールの分解には、ビタミンやアミノ酸などを多く消費するため、飲酒は髪の成長に必要な栄養素の不足を招きます。
また、喫煙は血管が収縮し、髪に栄養が行き渡りにくくなります。20代などの若さでも薄毛が生じるリスクが高まるため、健康的な生活習慣の意識が大切です。
ストレスをためない
ストレスの蓄積により交感神経が活発化した状態が続くと、頭皮まで血液が行き渡りにくくなります。髪に必要な栄養が届かないと、健康な髪の毛を育めません。
健やかな髪の毛のためにも、おいしいものを食べる、映画鑑賞する、何でも話せる友人とゆっくり話す、趣味に没頭する、外に出て散歩するなど、自分なりのストレス解消法を見つけておくことが大切です。
仕事や人間関係など、さまざまな悩みを抱える現代人にとってストレスをゼロにすることは難しいですが、薄毛はストレスの影響を大きく受けるので、うまく発散する必要があります。
適切なヘアケアを行う
正しいヘアケアは薄毛を防ぎ、頭皮の状態をよくします。頭皮に合わないシャンプーを使うと、頭皮環境を悪化させ、薄毛が進行してしまいます。洗髪は1日1回が目安です。
以下のヘアケア方法を実践してみましょう。
- 低刺激のシャンプーを使用する
- 頭皮マッサージをしてみる
- たっぷりのお湯で髪の毛を洗い流してから、シャンプーをよく泡立てる
- シャンプー後は水気を乾いたタオルで拭き取ってから、ドライヤーを使用してきちんと髪の毛を乾かす
シャンプーの際は、爪を立てずに指の腹を使って洗い、すすぎ残しがないよう、洗い流してください。
適切なヘアケアが、髪の毛や頭皮を良好な状態に維持できます。
また、育毛剤や育毛シャンプーには女性ホルモンに似た成分のほか、脱毛予防や薄毛に有効な成分が入っているため、髪の毛にハリとコシを与え、頭皮環境の改善に期待ができます。日頃から頭皮ケアしておくと大きな脱毛症の防止につながるため、一度ドラッグストアでチェックしてみるとよいでしょう。
ただし、育毛剤や育毛シャンプーには、発毛効果はありません。進行性の脱毛症の場合は、セルフケアでの改善が難しいため、専門クリニックへの受診が必要です。
医療機関を受診する
セルフケアでの改善が見込めないときには、薄毛の専門クリニックを受診してください。自分の症状を理解できるのはもちろん、髪の状態に合わせて治療を始められます。
薄毛は早期発見、早期治療で改善が期待できます。進行すると脱毛症状が悪化し、治療しても効果を感じにくくなるかもしれません。
専門クリニックなら将来の薄毛予防に対する治療もできるため、気になる方は早めの相談がお勧めです。
クリニックで受けられる治療内容については、以下の記事に詳しい記載がありますので、そちらもあわせてご覧ください。
参照:AGAクリニックで受けられる女性の薄毛治療とは?