髪の毛に関する先天的な病気に、縮毛症・乏毛症・無毛症という3つがあります。
当記事では、この3つの病の基礎知識と近年発表された研究について、お伝えします。
縮毛症の原因
縮毛症の主な原因は、LIPHという遺伝子の変異とされています。日本人のうち、約100人に2人はこのLIPH変異を持っているといわれており、決してまれなわけではない遺伝子変異です。
縮毛症の症状
縮毛症は、生まれつき髪の毛の量が少なく、縮れ毛になるのが特徴の症状です。
赤ん坊の頃から毛髪はまばらで、パサパサとした髪質であり、切れやすい状態です。
この縮毛症の症状は、髪の毛だけでなく、体毛にも発現する場合があります。
乏毛症の原因
乏毛症の原因は、局部性や全頭性などによっても異なり、様々な要因があるとされていますが、やはり遺伝性疾患によるものが多いようです。どの遺伝子に、どのような疾患があるために発症するかなどは、近年になって徐々に解明されつつある段階ですが、先天性の乏毛症では、縮毛症と同様、LIPH遺伝子の変異が影響しているといわれています。
乏毛症の症状
乏毛症は、症状としては生まれつき毛・髪の毛が全く生えない、もしくは生えていてもごく僅かな量の毛しかない疾患のことです。
また、生まれたときには毛が生えていたにもかかわらず、生後1~2年で抜け落ちて生えてこないというケースも乏毛症の症状に入ります。
無毛症の原因
無毛症の原因についても、生まれつきの遺伝子異常が挙げられます。
また、無毛症は、毛の組織だけでなく、歯や爪などの異常と関連して発症することもあるとされています。
そのほか、男性ホルモンの働きが異常を示すことで起こるケースもあるとされています。
無毛症の症状
無毛症は、本来あるべき部位に毛が完全ない状態となるのが症状です。
生まれつき毛髪がみられないタイプの症状もありますし、一度は毛が生えた状態で生まれてきても、時間経過とともに毛が失われてしまうタイプの症状もあります。
また、毛の失われる部分についても、毛髪のみの場合もあれば、全身の体毛が失われる場合もあります。陰毛が生える時期に生えてこない、といったタイプの症状の無毛症もあります。
そのほか、毛の生え方以外にも、歯の形や生え方に異常を示すこともあれば、爪の形状が異常を示すこともあります。また、精神発達に遅れがみられることもあります。
実際にどのような症状の経過をとるかは、ケースによって大きく異なります。
先天性乏毛症・縮毛症の最新研究
これらの病気については、治療法が確立されておらず、患者様は生涯薄毛に悩まされているのが現状です。
しかし、2020年に名古屋大学医学部附属病院と藤田医科大学の研究グループにより、有効性の高い研究結果が発表されました。
AGA・FAGA治療薬として有名な“ミノキシジルローション”が先天性乏毛症・縮毛症の方に対し高い効果を表し有効性・安全性を示した、というものです。
今まで治療法が確立されず、なすすべなく過ごされてきた患者様にとって、大変嬉しいニュースです。
まだ大規模臨床試験が行われているわけではないため、治療を望むか望まないかは患者様で個人差があることでしょう。
しかしながら、今後研究結果が認められれば、治療の選択肢があるだけでも患者様にとって、大変心強い研究結果となっていることは間違いありません。
髪の毛が生える・増えるという目に見える結果を生み出すため、大規模臨床試験が少しでも早く進められ、多くの患者様が安堵される治療薬の発見となることを心から願います。