AGA(男性型脱毛症)を治療するうえで、ザガーロは効果に定評のある医薬品です。ただし、使用するにあたって、知っておくべき注意点もあります。
そこで本記事では、ザガーロがどんな薬なのか、効果・副作用・ジェネリックや、同じくAGA治療薬であるプロペシアとは何が違うのかなどを解説します。
ザガーロとは
ザガーロは、デュタステリドという成分を配合した比較的新しいAGA治療薬です。
もともと前立腺肥大症の患者向けに開発されましたが、服用した患者の髪の毛が増えるという事象がみられ、AGA治療薬としても使われるようになりました。
ザガーロの効果
ザガーロは、人間の体内に存在する還元酵素「5αリダクターゼ」Ⅰ型・Ⅱ型の働きを阻害して、男性ホルモン「テストステロン」との結合を防ぐことで、「ジヒドロテストステロン(DHT)」が生成されることを抑制します。これにより、抜け毛の要因となる「トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)」の産生を抑えられるため、脱毛の抑制が期待できます。
実際に、男性被験者120 名を対象にした国内の試験(ザガーロの主成分であるデュタステリドを52週にわたって1日あたり0.5mg投与)では、直径30μm以上の非軟毛数・硬毛数・非軟毛直径が52週後に増加しました。また、同試験において皮膚科医が行った頭頂の写真評価では、26週・52週時点でいずれもベースラインより有意に毛量の増加が認められました。
こうした結果から、日本皮膚科学会が公開している男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版でも、成人男性のAGA治療に対してデュタステリド内服を強く勧めています。
ザガーロとプロペシアの違い
プロペシアは、フィナステリドという成分を配合した代表的なAGA治療薬です。
ザガーロとプロペシアの違いは、以下のとおりです。
ザガーロ | プロペシア | |
効果の範囲 | 側頭部・後頭部・前頭部・頭頂部 | 前頭部・頭頂部 |
治療のゴール | AGAの改善 | AGAの進行遅延 |
取り扱い方法 | 小児及び女性の接触、服用は厳禁 | 小児及び女性の接触、服用は厳禁 |
ザガーロが5αリダクターゼⅠ型及びⅡ型を抑えるのに対し、プロペシアが抑えるのはⅡ型のみです。
5αリダクターゼは、Ⅰ型が後頭部と側頭部に、Ⅱ型が前頭部と頭頂部に、多く分布しています。そのため、Ⅰ型・Ⅱ型の両方に作用するザガーロのほうが、より効果が期待できます。
実際に、917例のAGA患者を対象に、24週にわたってザガーロ・プロペシア・プラセボを投与した比較試験では、プロペシア1mg/日で頭頂部円内(直径 2.54cm円中)の発毛効果が56.5本だったのに対し、ザガーロ0.5mg/日では89.6本と、ザガーロに優位性がある結果が出ています。
ザガーロにジェネリック医薬品(後発薬)はある?
ザガーロのジェネリック医薬品については、日本でも沢井製薬や東和薬品、富士製薬などの製薬会社から、「デュタステリド錠」や「デュタステリドカプセル」の名で発売されています。
費用面は、ジェネリックの場合、30日分で6,000~7,000円が相場です。少々高く感じるかもしれませんが、ザガーロは30日分が10,500円で処方されているため、30~40%ほど安く購入できることになります。
なお、ザガーロジェネリックは、病院やクリニックでしか購入できません。海外製であれば個人輸入も可能ですが、偽造品や粗悪品が送られてくるリスクがあり、安全性が保証されないためおすすめできません。医薬品を個人輸入した場合、副作用によって治療が必要になった際に利用できる「医薬品副作用被害救済制度」の適応外にもなるため、何かあった場合の医療費はすべて自己負担となります。メリットよりもリスクが大きいため、医師から処方してもらいましょう。
ザガーロが「効果がない」「やばい」と言われる理由
ザガーロは、たしかな治療効果があるにも関わらず、「効果がない」「やばい」などといわれることがあります。誤解されがちなその理由は、下記の3点が考えられます。
- ザガーロの効果が出る前に服用をやめてしまう
- ザガーロの効果が出てすぐに服用をやめてしまった
- 頭皮のケアをまったくしていない
一般的に、「AGA治療薬を服用すれば、すぐに薄毛が改善される」と思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。ザガーロ添付文書にも「治療効果を評価するためには、通常6ヶ月間の治療が必要である」と記載されています。個人の症状や体質によっても治療効果は異なるため、少なくとも6ヶ月から1年はかかると理解しておきましょう。そうでないと、効果が出る前に服用をやめることになってしまいます。
また、効果が出た途端、「もう大丈夫」と服用をやめてしまうケースもあります。AGAは進行性の脱毛症です。自己判断で薬の服用を途中でやめると、抜け毛が再開してしまうので注意してください。
なお、薄毛を改善するには、土台となる頭皮のケアも重要です。たとえば、頭皮が固い人は血行不良な場合が多く、髪に必要な栄養素が運ばれないため、薬効も出にくくなります。しかし、そういった情報を知らないと、「この薬は効かない」と誤った判断を下してしまうのです。
せっかくの治療が無駄にならないように、正しい認識を持って、腰を据えて治療に取り組んでみてください。
ザガーロの副作用
ザガーロにおいて注意すべきの副作用は、以下の2つです。
初期脱毛
初期脱毛は、ザガーロをはじめとするAGA治療薬とは切り離せない副作用です。
服用を始めてから1〜3ヶ月の間に、初期脱毛によって抜け毛が増えることがあります。初期脱毛は乱れたヘアサイクルを正常化させるために必要な過程であり、一過性の脱毛症状です。
しかし、治療をしているはずなのに抜け毛が増えたら不安になるでしょう。不安が拭えない場合は医師に相談することをおすすめします。
関連記事:初期脱毛はなぜ起こる?仕組みや見分け方、終わる兆候をわかりやすく解説
性機能障害
ザガーロの注意すべき副作用の1つとして、男性ホルモンの減少に起因する性機能障害があげられます。
海外と日本の合同で行われた試験における日本人のみのデータと日本国内で行われた長期間投与の試験における、性機能障害の副作用を下記にまとめます。
副作用 | 国際共同試験(日本人のみ) 120症例 | 国内長期投与試験 120例 |
勃起不全 | 6例(5.0%) | 13例(10.8%) |
性欲減退 | 7例(5.8%) | 10例(8.3%) |
射精障害 | 2例(1.7%) | 5例(4.2%) |
ジヒドロテストステロンは、AGAを進行させるホルモンである一方で、男性の性欲や性機能に対しても影響を与えるホルモンです。ザガーロを服用することでジヒドロテストステロンが減り、毛髪に良い影響がある反面、性欲の減退や、性機能に対する副作用が発現します。
基本的にはザガーロを中止することで副作用は改善しますが、まれに服用を中止した後も続くことがあります。普段と異なる身体症状が生じた場合は、医師に相談するようにしましょう。
その他症状
発生頻度は1%未満と少ないものの、そのほかにも注意すべき副作用があります。
- 発疹
- 頭痛
- 抑うつ
- 乳房障害
- 腹部不快感
AGAの治療薬とこれらの副作用は関連性がないように思われがちですが、ザガーロの複数の試験において低頻度ではあるものの、副作用として生じる可能性があると報告されています。
服用を開始して、これらの症状はもちろんのこと、他にも気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。
ザガーロの服用方法
ザガーロは、1日1回1カプセルを服用します。服用のタイミングに指定はありませんが、飲む間隔が短いと血液中の成分濃度が高まり、副作用が発現しやすくなるため24時間以上間隔を空けるように注意しましょう。
飲み忘れを防ぐために、毎日、同じタイミングで服用するのがおすすめです。
もし、飲み忘れてしまった場合でも慌てる必要はありません。気がついた時点で服用し、服用した時間をメモしておき、それを目安に翌日以降の服薬管理をおこないましょう。
ザガーロに関する注意点
ザガーロを服用する際の注意点は、以下の2つです。
肝機能に障害がある人は服用できない
どの薬においても、添付文章に「禁忌」といわれる注意事項が記載されています。禁忌とは、その薬を投与すべきでない患者や状態、併用してはいけない薬をさします。そしてザガーロの場合、肝機能に障害がある患者には用いてはなりません。
肝臓に障害がある場合、ザガーロの主成分である「デュタステリド」をうまく代謝できず、副作用が強く表れる可能性があるからです。
健康診断で肝臓の機能が低下していることを指摘されている方は、必ず医師に相談の上で服用するようにしましょう。
女性や子どもは服用・接触してはいけない
ザガーロは、触れるだけで成分が皮膚から吸収されてしまう特徴を持つため、女性と子どもは使用できません。そのため、保管方法には細心の注意が必要です。
ザガーロの成分が妊婦の体内に入ると、男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されています。また、体内に入った成分は母乳にも移行するため、授乳婦においても注意が必要です。
小児に対しても同様で、有効性や安全性の確認がされていないため注意が必要です。とくに目を離した隙に触ってしまうことがないように気をつけましょう。
家庭に妊婦、授乳婦、子どもいる場合は事故を防ぐために、ほかの薬との保管場所を分ける、子どもの手の届かないところにしまうなど、保管方法に注意しましょう。
ザガーロに関するよくある質問
最後に、ザガーロに関するよくある質問について答えていきます。
Q.ザガーロは服用し続けると耐性がつく?
ザガーロの服用を続けても、耐性がつくことはありません。むしろ半年以上の継続的な服用が推奨されています。耐性がつく心配はないため、治療効果を得たい方は、継続的に服用しましょう。
Q.ザガーロは保険適用になる?
AGA治療は、保険適用が認められておらず自費診療です。円形脱毛症や、脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎など脱毛の原因となるような疾患が見つかった場合、その治療費のみ保険適用となります。
AGA治療はいかなる場合も保険適用にならないため、覚えておきましょう。