「白髪が増えてきた」
「薄毛になってきた」
年齢とともに、どうしてもこういったお悩みが出てくるかと思います。
同じようなタイミングで気になりだすと、「白髪」と「薄毛」が関係あるように思えてしまうこともあるでしょう。
また、白髪を見つけるとつい抜いてしまう、という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、この記事では白髪を抜いてもよいのかといった問いへの答えや、白髪と薄毛のメカニズム、白髪と薄毛に影響する原因、対処法までお伝えしていきます。
「白髪を抜くとはげる」は本当?
まず、「白髪を抜き続けるとはげる」という噂の真偽について、お答えしましょう。
結論としては、「白髪を抜き続けるとはげる」は嘘ではなく事実です。
髪の毛の生え変わりには限度があります。そのため、一つの毛穴に対する生え変わりのサイクルが終了すると、その毛穴からは永久に髪の毛が生えません。白髪を抜くことは、髪の毛のヘアサイクルをわざわざ短縮させ、ヘアサイクルの残数を減らすハイリスクな行為だといえるでしょう。
これは、何も髪の毛だけに限った話ではありません。若いときに毛抜きで眉毛を処理をしていたところ、大人になって全く生えてこなくなったという苦い経験をお持ちの方もいるでしょう。体毛も生え変わりの回数はある程度決まっています。サイクルの終わった毛穴からは、二度と毛が生えることはありません。
そして、白髪であってもそれは同じです。抜きすぎてはげてしまうのであれば、手間がかかっても白髪染めをするほうがいいと思いますし、昨今はあえて白髪染めをせずにグレイヘアを楽しむという流れも出てきていますから、白髪が気になっても今日から抜くという行動はやめましょう。
既に何度か繰り返し白髪を抜いてしまい、発毛に不安がある方は当院のカウンセリングへお越しください。
マイクロスコープで毛根や毛球の有無を確認し、今後の発毛が可能か診断をさせて頂きます。
白髪でも大切な髪の毛ですから、大切に育てることを意識してください。
白髪と薄毛は関係ない?
では次に、白髪と薄毛の関係性についてお答えしましょう。
こちらも結論からお伝えすると、白髪と薄毛に直接的な関係はありません!
理由は白髪と薄毛になるプロセスに違いがあるところにあります。白髪はメラニン色素の不足が主な原因となっています。一方薄毛(AGA)は男性ホルモンや遺伝の影響を大きく受けます。このように白髪と薄毛の根本的な原因が違うため、白髪が多いから薄毛になる、あるいは薄毛になると白髪が増えるという直接的な因果性や関係性はありません。
毛髪成長の仕組み
では毛髪の仕組みを交えながら、白髪と薄毛それぞれのメカニズムについてお伝えしていきます。
まず、髪は地肌に埋まっている部分を毛根と呼び普段目にする地肌から出ている部分を毛幹と呼びます。毛根の一番下にある毛球で、髪の毛の元となる毛母細胞が毛乳頭からの栄養を受け取って細胞分裂を繰り返し角化したものが毛髪です。
毛母細胞と隣り合っているメラノサイト(色素細胞)で作られたメラニン色素を毛母細胞が取り込みながら角化し髪の毛が成長していきます。
白髪になるプロセス
前述したように、毛髪はメラニン色素を取り込みながら成長していきます。このメラニン色素こそ髪に色を与えている存在であるため、成長過程でメラニン色素を取り込めなかったり、メラニン色素が作られなくなると色素を持たない白髪になります。
白髪になるタイプは2つあります。
①休止型・・・・メラノサイト(色素形成細胞)が残っているにも関わらずメラニン色素の合成を行っていないタイプ
②欠失型・・・メラノサイトそのものが非常に減少、あるいは欠失しているタイプ
白髪の多くは欠失型(メラノサイトの活動低下)といわれています。白髪になる主な原因は加齢といわれていますがそれ以外にもストレス、遺伝、栄養不足、紫外線、高熱、薬の副作用も影響があるといわれています。
また人の髪色はメラニン色素の種類と量で決まります。メラニン色素には、ユーメラニン(黒褐色系)とフェオメラニン(黄赤色系)の2種類あります。ユーメラニンが多くメラニンの総量が多いのが私たちアジア人種の黒髪。フェオメラニンが多くメラニンの総量が少ないのが欧米人のブロンド。そして、いずれのメラニンをもほとんど含まないのが白髪です。
薄毛(AGA)のプロセス
男性の薄毛の多くがAGA(男性型脱毛症)といわれており、その大きな原因がジヒドロテストステロン(DHT)です。男性ホルモンのテストステロンが毛乳頭内で5α-リダクターゼと呼ばれる酵素の働きかけにより、悪性男性ホルモンのDHTに変換されてしまうと、このDHTが、アンドロゲンレセプターと呼ばれるホルモン受容体と結合することで、毛母細胞の働きを抑制しヘアサイクルが乱れ成長期が短い毛髪になります。
成長期が短縮された細く短い髪の毛が増えることで、頭皮が露出し始めます。
白髪と薄毛の関係性を考える! 両方に影響する原因
白髪と薄毛に直接的な関係がないことを説明してきました。ではなぜ髪と薄毛が関係していると思われたり、同時に両方に悩まれる方がいたりするのでしょうか?それは二つの症状が起こる原因にいくつかの共通点があるからだと考えられます。ここでは具体的な共通点を3つ紹介していきます。
老化による現象
加齢とともに毛包は徐々に小さくなります。するとメラニン色素を生み出すメラノサイトの働きが低下したり、生えてくる毛が細く短くなったりすることで白髪と薄毛が起こりやすくなります。白髪になったから薄毛になる、薄毛になったから白髪になるのではなく、どちらも共通する「老化」という原因があるため同じようなタイミングで気になりだすと言えます。
栄養不足が影響を与える
現代人の食事は簡単に便利で摂取できるファストフードなどの普及により、必要な栄養素が不足しがちになったり偏った食事になりがちです。髪の毛も食事から摂取した栄養を取り込んで成長していくため栄養不足になると髪の毛の成長にも影響します。
髪の成長にはタンパク質、ビタミン・ミネラルが欠かせません。髪に色を与えるメラニン色素は、「チロシン」というアミノ酸に「チロシナーゼ」という酵素が働きかけることによって作られるのですが、このチロシナーゼを活性化するためにミネラルが必要になります。また髪の毛は約90%が「ケラチン」というたんぱく質で構成されていることから、健康な髪の毛の成長にはタンパク質が必要になります。
ストレス
昔から「苦労すると白髪が増える」「ストレスでハゲる」といわれるように強いストレスは白髪と薄毛の大敵です。過剰なストレスは自律神経を乱すことがあり、交感神経の働きが優位に働き続けることで血管を収縮させるため血液の流れが悪くなります。髪の毛を成長させる栄養は血液によって運ばれるので、血液の流れが悪くなるとメラノサイトや髪の毛を成長させる毛母細胞まで栄養が行き届かなくなり、白髪や薄毛に陥ります。
白髪と薄毛に悩む時の対処法
白髪と薄毛の両方に悩んでいるときに試したい対処法を紹介します。基本的には健康的な生活を送ることが大切になります。
1.食生活を見直す
健康な髪の毛を成長させるためには栄養バランスの取れた食事をとることが重要です。育毛と白髪に効果的な栄養素をまとめてみました。基本的には三食バランスの良い食事を心がけることが大切ですが、忙しかったり偏食などがある場合はサプリメントで補うこともできます。
・タンパク質
タンパク質は髪の毛の主成分です。タンパク質が不足すると切れ毛や薄毛・ハリコシがない不安定な髪の毛になります。また、タンパク質不足は、メラニン色素の原料であるチロシンの不足にもなるため白髪になりやくすなります。
タンパク質は肉や魚、卵などの動物性タンパク質だけでなく大豆製品などの植物性タンパク質も取り入れるようにしましょう。低カロリー高たんぱくな鶏のささみや鶏ムネ肉、ビタミン群も含まれている高たんぱくなシャケは特におすすめです。また最近ではコンビニなどで売られているプロテインで簡単にタンパク質を摂取することができます。
・ミネラル
ミネラルのうちのひとつである亜鉛は、メラノサイトの働きを活性化させてメラニン色素の生成を促進したり、薄毛の原因のひとつである5-αリダクターゼを阻害する働きがあります。
亜鉛を多く含む食材は、牡蠣・豚レバー・ナッツ類・チーズなどです。
2.運動習慣を取り入れる
白髪・薄毛対策には、体内の血流を良くすることが有効です。頭皮の血流が良ければ、発毛・育毛機能もスムーズになります。日頃から運動をして筋肉を動かし全身の血液の巡りを促しましょう。運動といってもハードな運動をする必要はありません。ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、ゆるやかな動きでも長く続けられそうなものを試し、習慣づけて続けることが大切です。また体を動かすとスッキリすることができ、ストレス解消にもつながります。
3.頭皮ケア
ヘアトニックや育毛剤を使用することで頭皮ケアを行うことができます。ヘアトニックは頭皮のフケやかゆみなどの解消や予防に使用されることが多いですが、頭皮を清潔にすることで頭皮環境の改善も期待できます。育毛剤は有効成分によって、血行促進に役立つものや栄養補給に特化したものなど、さまざまな種類があります。 お好みの使い心地や頭皮との相性などに合わせて、自分に合ったものを選びましょう。