「ケトコナゾールには、どんな症状に効果があるの?」
「ケトコナゾールの副作用や注意点は何がある?」
こういった疑問を持たれている方もいらっしゃることでしょう。
ケトコナゾールはさまざまな皮膚の疾患に用いられるとともに、AGA治療にも使われるケースがあります。
そこで本記事では、ケトコナゾールを安心して使えるよう、ケトコナゾールはどんな薬なのか、副作用、注意点について詳しく解説します。
ケトコナゾールとは
ケトコナゾールは、真菌(カビの仲間)の働きを抑える「抗真菌薬」として使用される塗り薬です。
ケトコナゾールは真菌の細胞膜合成を阻害することで、真菌の発育を抑制または阻止し真菌を殺菌する作用があります。似た成分の外用抗真菌薬はいくつかありますが、なかでもケトコナゾールは皮膚にとどまりやすいのが特徴です。
医療用医薬品としてのケトコナゾールは、先発薬(新薬)の「ニゾラール」、後発薬(ジェネリック)の「ケトコナゾール」などが発売されています。ただ2つの薬剤に効果の違いなどはなく、ケトコナゾールのほうがニゾラールより安価で購入しやすくなっています。
ケトコナゾールはどんな症状に効果がある?
ケトコナゾールの効果は、特に「脂漏性皮膚炎」「皮膚カンジダ」「白癬(水虫)」「癜風(でんぷう)」といった皮膚真菌症に発揮されます。
抗真菌作用が高く、さまざまな種類の真菌に有効なため、医療現場では性別・年齢を問わず、幅広く患者様に処方されています。
それぞれの疾患についてもみていきましょう。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは皮膚に常在している「マラセチア」という真菌の一種が、過剰に存在する皮脂を栄養とし異常に繁殖することで皮膚に炎症を起こします。皮脂の分泌が盛んな場所に発症しやすく、頭皮・髪の生え際・わきの下・顔では眉間や鼻のわき、耳の後ろに多くみられます。
脂漏性皮膚炎が頭皮で発症すると、赤みやフケが主な症状としてみられ、頭皮環境の悪化によって抜け毛や薄毛につながる恐れがあります。顔に発症すると赤みを帯びてカサカサとしておりかゆみを伴います。
皮膚カンジダ
カンジダとは口腔、消化管、股部に常在している真菌の一種で、高温・多湿などの環境によるものやステロイドの投与や糖尿病などによる免疫力の低下によってカンジダが増殖することで発症します。股部・陰部・オムツ部・手指の第3指間など湿ってこすれやすい部位に発症しやすく、軽いかゆみとともにじくじくした紅い斑で、その中や周囲に小さい水ぶくれや膿が多数見られる症状を呈します。
白癬(水虫)
白癬とは皮膚糸状菌という真菌の一種によって生じる感染症の一種です。角質を栄養に繁殖するため角質が存在する部位ではどこでも感染する疾患ですが9割近くは足に発症し、いわゆる「水虫」と呼ばれています。白癬が感染する部位によって現れる皮膚症状は異なりますが、よく見られる足の間にできる白癬は赤くジュクジュクになって皮がむけたりします。
癜風(でんぷう)
癜風とは脂漏性皮膚炎と同様に皮膚の常在菌のマラセチア菌が夏などの高温・多湿の環境下で繁殖して発症します。胸、背中、わき、首、腕などに多く見られ、皮膚に落屑を伴うシミのような淡い茶色の斑点ができます。痛みやかゆみなどの自覚症状がないことが多いです。
ケトコナゾールはAGA治療にも有効
ケトコナゾールは抗真菌薬ですが、近年「5αリダクターゼ」という還元酵素の働きを阻害し、AGA(男性型脱毛症)の主要因ともいわれる「ジヒドロテストステロン」の産生を抑制する作用があると考えられ始めています。
日本皮膚科学会が策定した「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」というガイドラインでも、AGA治療へのケトコナゾールの使用の推奨度はC1(行ってもよい)ランクに位置付けされています。
また、前出の脂漏性皮膚炎も頭皮環境に乱れをもたらし、抜け毛や薄毛が起きやすい要因になります。ケトコナゾールによって真菌を取り除き、脂漏性皮膚炎による頭皮環境を改善することで、抜け毛・薄毛を防ぐことができます。
ケトコナゾールのクリームとローションの使い分け・塗り方
ケトコナゾールにはクリームタイプとローションタイプがあるのでそれぞれのタイプ別にご紹介していきます。ケトコナゾールの基本的な使い方は1日1回患部に塗布します。脂漏性皮膚炎に対しては1日2回患部に塗布します。
クリーム
クリームは若干べたつきがあるため、毛がある頭皮よりも顔や脇などに適しています。クリームの使用量の目安は人差し指の先端から第一関節までの量の0.5gが、大人の手のひら2枚分の量になります。
足の水虫にケトコナゾールクリームを使用する場合、人差し指の第一関節より少し多めの量がだいたい片足分になります。水虫の症状がある部分だけでなく、足全体にたっぷりと塗ることで十分な効果が得られます。
ローション
ローションはさらさらしており伸びがよく浸透率が高いため、頭皮などの有毛部に適してします。浸透率が強く刺激が強いことから、皮膚の弱い部分への使用は向いていません。
ローションの使用方法は容器をよく振ってから、容器を押して薬液を手に取り患部に塗布します。患部に容器のまま直接塗布すると、細菌が容器の中に入り込んで使用できなくなる恐れがあります。
ローションタイプは市販のシャンプーに混ぜて頭皮の脂漏性皮膚炎の症状を改善するケトコナゾールシャンプーとしてもお使いいただけます。しかし一部のシャンプーにはケトコナゾールを混ぜて使用するのに適さないシャンプーもあるため、あらかじめ医師にご確認ください。
ケトコナゾールの副作用
ケトコナゾールの副作用には、「炎症」「刺激感」「かぶれ」などがあります。
しかし、いずれの副作用も発生する確率は5%未満のため、心配しすぎる必要はありません。
ケトコナゾールの副作用は、基本的に塗った場所にあらわれるため、飲み薬のように副作用が全身におよぶ心配はほとんどありません。順番に見ていきましょう。
炎症
ケトコナゾールが合わないと皮膚の炎症が起こり、赤み・痛み・むくみ・発疹などの出る可能性があります。
起こる確率は皮膚の赤みが0.1~5%未満、痛み・むくみ・発疹などは0.1%未満です。
刺激感
人によっては、ケトコナゾールがしみて、刺激感や皮膚が熱くなったような感じを受ける可能性があります。
起こる確率は高くはなく、刺激感は0.1%~5%未満、皮膚が熱くなったような感じは0.1%未満です。
かぶれ
ケトコナゾールが合わないとかぶれ(接触性皮膚炎)が起こり、じんましんのような症状やかゆみがあらわれます。
かぶれの程度が重篤であったり、全身に出たりする場合などは、かぶれを薬に対するアレルギーととらえ、「過敏症」とよぶこともあります。使用を始めてから皮膚状態やかゆみが悪化する場合は、医師への相談が必要です。
ケトコナゾール使用時の注意事項
ケトコナゾールを使用するにあたり知っておきたい注意事項をお伝えします。
妊娠中・授乳中の方の使用
ケトコナゾールは妊娠中および授乳中の方の使用は安全性が確立されていません。そのため、治療による効果が危険性を上回ると判断された場合のみ使用されますので、必ず医師へ確認が必要です。
小児への使用
低出生体重児、新生児に対する安全性は確立していません。年齢や症状、治療の有益性などを考慮したうえで使用するかどうか検討されます。
過去に使用しアレルギーが出た人
過去にケトコナゾールを使用して過敏症やアレルギー症状などを引き起こしたことがある方は使用できません。
医師の処方が必要
ケトコナゾールは医療用医薬品であるため同成分の薬剤は薬局やドラッグストアなどで市販されていません。医師の診察のもと処方されるため、使用したい場合は医療機関を受診しましょう。