AGA(男性型脱毛症)とは?

AGAとは、「Androgenetic Alopecia(アンドロジェネティック・アロペシア)」の略で、日本語では「男性型脱毛症」といいます。成人男性に多く見られる進行性の脱毛症です。
日本皮膚科学会が発表した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」によれば、日本人男性の AGA 発症頻度は全年齢平均で約30%と報告されています。
AGAの特徴
AGAの特徴は、生え際や頭頂部から毛髪が薄くなり、髪の毛が細く、短く、ハリやコシがなくなっていく点です。個人差がありますが、一般的には30代~40代にかけて発症する人が多いとされています。
ただし、近年では若年層のAGAも増加傾向にあり、10代後半や20代で発症するケースも珍しくありません。
AGAの進行パターン
症状の進行度合いに応じて、M字型・ O字型・ U字型に区分されます。
M字型
- 額の生え際から後退
- 剃り込み部分が深くなる
- 前頭部の髪が細くなる
O字型
- 頭頂部から薄毛が進行
- つむじ周辺の地肌が透ける
- 日本人に多く見られるパターン
U字型
- 前頭部全体から後退
- 額が広くなる
- M字型とO字型の複合で進行が早い傾向
AGAの原因とは?
AGAの主な原因は、男性ホルモン、遺伝、環境的要因の3つに大別できます。これらの要因が複雑に関与することで、薄毛が進行すると考えられています。
①男性ホルモン:ジヒドロテストステロン(DHT)

ジヒドロテストステロン(DHT)とは、テストステロンが5αリダクターゼという酵素と結合して生成される、より活性の高い男性ホルモンです。
現在の医学的理解では、ジヒドロテストステロン(DHT)はAGAの発症に関与していると考えられています。
- ジヒドロテストステロン(DHT)が毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)と結合
- 脱毛シグナル(TGF-βなど)が産生される
- 毛母細胞の活動が抑制される
- ヘアサイクルの成長期が短縮する
2. 遺伝
AGAの発症には、遺伝的要因が関与します。主な遺伝要因は以下の2つです。
- 5αリダクターゼの活性度:ジヒドロテストステロン(DHT)の分泌量は、5αリダクターゼの量に関連することが知られており、この量は遺伝的影響を受けるとされています。
- 男性ホルモン受容体の感受性:男性ホルモン受容体のジヒドロテストステロン(DHT)に対する感度(感受性)が高い場合、脱毛信号が出やすくなる可能性があります。この感受性も遺伝的要因が関与するとされています。
これらの遺伝情報は、主に母親の家系から受け継がれることが多いとされています。母親の父親(祖父)や兄弟に薄毛の人がいる場合も、AGAを発症するリスクが高くなる可能性があります。
3. 環境的要因(AGAに影響を与える可能性のあるもの)
AGAの原因は男性ホルモンと遺伝が主要因ですが、環境的要因も影響を与える可能性があると考えられています。
2013年1月にヨーロッパ皮膚科学誌『European journal of dermatology: EJD 23(1)』に掲載された研究論文「Eleven pairs of Japanese male twins suggest the role of epigenetic differences in androgenetic alopecia」によれば、20~40歳の日本人男性一卵性双生児11組中5組で毛髪量に差が認められました。
この研究では、同一の遺伝子型を共有する一卵性双生児の間に毛髪量の違いがあったことから、生活習慣や環境的要因などによる遺伝子発現への影響が、AGAの進行度合いの差に関与している可能性が示唆されています。
AGA発症に影響を与える可能性のある環境的要因には、以下のようなものが挙げられます。
- 食生活の乱れ
- 飲酒習慣
- 喫煙習慣
- 運動不足
- 睡眠不足
上記のような環境的要因は、AGAの発症や進行の要因になり得るため、注意しましょう。
AGAかも……と思ったら、AGAセルフチェック
進行度合いには個人差が大きいため、自己判断は難しい場合があります。
「もしかしてAGAかも……」と思われた場合は、当院のAGAセルフチェックをお試しください。
※セルフチェックはあくまで目安です。AGAの可能性が指摘された場合は、当院で専門医による適切な診察を受けることをお勧めいたします。
AGA診断における医師の診察プロセス
AGAセルフチェックで気になる結果が出た場合、専門医による詳細な診察を受けることが重要です。医師は問診・視診・触診を通じて患者様の症状を総合的に把握し、適切な治療方針を決定します。
問診(もんしん)
- 家族歴の確認:両親や祖父母に薄毛の方がいるかを聞き取り
- 発症時期と進行状況:いつ頃から薄毛が気になり始めたか、どのように進行しているかを確認
- 生活習慣の聞き取り:食生活、睡眠、ストレス、喫煙・飲酒習慣などを調査
- 既往歴・服用薬の確認:他の病気や服用中の薬がAGAに影響していないかをチェック
- 症状の自覚度合い:患者様がどの程度薄毛を気にしているかを把握
視診(ししん)
- 頭部全体の観察:額の生え際、頭頂部、側頭部、後頭部の毛髪状態を確認
- 毛髪の質の評価:髪の太さ、コシ、密度、色合いなどを観察
- 脱毛パターンの判定:M字型、O字型、U字型のどのパターンに該当するかを診断
- 頭皮の状態チェック:頭皮の色、炎症の有無、皮脂の分泌状況などを確認
触診(しょくしん)
- 頭皮の柔軟性確認:頭皮が硬くなっていないか、血行状態は良好かを手で触れて確認
- 毛髪の引っ張り検査:軽く髪を引っ張り、抜けやすさや毛根の状態を調べる
- 頭皮の厚みチェック:頭皮の厚さや弾力性を手で触れて確認
- 毛穴の状態確認:毛穴の詰まりや炎症がないかを調べる
AGAは早期診断と早めの治療開始が重要です!
AGA治療において、早期診断と早めの治療開始が重要とされるのには明確な理由があります。それは、髪の毛を健康な状態に戻せるかどうかが、治療開始のタイミングに大きく左右されるからです。
薄毛を放置しておくと、毛根は次第に弱まり、最終的には完全に活動を停止してしまいます。つまり毛包が著しく萎縮した状態になります。この段階まで進行すると、治療による改善が困難になります。
しかし、AGAが進行し始めた初期段階であれば、毛根はまだ生きています。
この時期にプロペシアやフィナステリド、ザガーロやデュタステリドによる治療を行うことで、「ジヒドロテストステロン(DHT)」の生成を抑え、毛根の働きを回復させながら再び健康な髪が生えてくる可能性を高めることができるのです。
早めの治療開始の3つのメリット
早めの治療開始には以下のような3つのメリットもあります。
- 進行の抑制:AGAの進行スピードは人それぞれですが、早めに治療を開始することで、薄毛の進行を食い止め、将来の髪の状態を良好に維持できる場合があります。
- 心理的負担の軽減:髪が極端に薄くなる前に対策することで、外見への不安や日常生活におけるストレスを軽減できる可能性があります。
- 経済的負担の軽減:症状が軽いうちに治療を開始する場合、治療期間が短く済む可能性があり、結果として費用を抑えられる場合があります。
「最近、髪が薄くなってきたかも…」と感じたら、まずはできるだけ早く専門医に相談することをお勧めします。特に、家族に薄毛の人がいる場合は、遺伝的な影響も考えられるため、早めの治療開始が大切です。