2017年5月16日の中日新聞・東京新聞のオンライン版で、「日本原産の香辛野菜『本わさび』に含まれる成分がヒトの育毛を促すメカニズムを初めて解明した」と報じられ、当時一躍話題になりました。
そこで、本記事では、実際に本わさびに発毛・育毛を促す効果はあるのかについてお伝えしたいと思います。

本わさびがなぜ育毛に有効となるのか？

本わさびの成分がなぜ発毛・育毛に有効とされたのかを知るには、まず髪が生える仕組みについて理解しましょう。
髪が生える仕組みは、髪の根元にある毛乳頭細胞から毛母細胞に細胞分裂指令が出されることで、細胞分裂とともに髪が生成されることで成り立っています。逆にいえば、一般的な薄毛は、この細胞分裂指令がホルモン等の影響で阻害されることで進行する、というわけです。
このことに関連して、業務用わさび最大手の金印は、本わさびに発毛・育毛を司る毛乳頭細胞を活性化する成分が含まれていることを細胞実験で確認しました。先述の報道は、その結果を受けたものだったのです。

発毛・育毛を促す具体的な成分とは？

では、本わさびに含まれるどんな成分が発毛・育毛を促すとされたのでしょうか？
ポイントとなるのは、本わさびの葉に含まれる「イソサナポリン」というポリフェノール成分と、根や茎に含まれる「6-MSITC」という辛み成分です。
細胞実験によると、この2つの成分が毛乳頭細胞を活性化させる度合いは、AGA治療薬として知られるミノキシジルの3倍に達したといいます。この情報により、本わさびに対する期待が高まったわけです。

本わさびはAGA治療に使用できるのか？

ここまでの話を読んで、「じゃあ、AGAの治療に本わさびを使ってみたい」と思った方もいるかもしれません。
しかし、現時点では、採取した毛乳頭細胞に対して行われた実験にとどまり、実際の人体での試験計測は行われていません。臨床的な証明もまだないため、実用化にはいたっていない状態です。
あくまで、「本わさびに毛乳頭細胞が強く活性化する因子があることが明らかになった」という段階にすぎないのです。
そのため、発毛・育毛の効果がある成分として確立されるには、専門的な育毛関連企業の研究・開発を待つことになるでしょう。
ちなみに、市販のわさびチューブなどにおいては西洋わさびが利用されており、本わさびは使用されていません。イソサポナリンや6-MSITCは含まれていませんし、直接頭皮に用いると皮膚が荒れるなどのダメージを負うのみとなります。あくまで近い将来に実用化されるかもしれないAGA関連の情報ということになりますので、誤ってわさびを試すことは避けてください。